第2章54話:面談2

少女がセルヴァンを見た。


「セルヴァン・リュクオールですわよね?」


「そうです」


「メアリーヌ・フラムスティードですわ。よろしくお願いいたしますわ」


とメアリーヌはあいさつをしてから、付け加えた。


「あなたは貴族のご令息ですし、敬語はなくて構いませんわよ」


「そう……か。わかった」


とセルヴァンは了解した。


少女が椅子に腰を下ろした。


膝のうえで猫種ねこしゅの魔物が丸くなる。


「アーシャからだいたいのことは聞いておりますわ。G線上のアリアに感銘を受けたとのことで」


「ああ」


「それでメアリーヌ商会で働きたいと」


「そうだ」


メアリーヌはセルヴァンをしばらくまっすぐに見た。


じろじろと値踏みするような視線ではなく、ただ静かに見ている感じだった。


「いくつか聞いてもよろしいですか?」


「どうぞ」


「あの曲を聴いたとき、何を感じましたの?」


少し意外な問いだった。


「……うまく言えないが」


とセルヴァンは少し考えてから、次のように答えた。


「心をわしづかみにされた感じだった。演奏が終わったあとも、何日も頭の中に残っていた」


「なるほど」


メアリーヌはわずかに微笑んだ。


「あなたはこれまでにどんなお仕事をしてきましたの?」


セルヴァンは正直に答えた。


「父のツテでいくつか商会の手伝いをした。流通関連と、あとは貿易の補佐を少し。どれもまあ……人並みにこなせたとは思う」


「やりたいことを探している途中、ということでしたわね」


「アーシャから聞いたか」


「ええ」


メアリーヌはうなずいてから続けた。


「少し聞き方を変えますわ。商会の手伝いをしていたとき、どんなことを考えながら仕事をしていましたの?」


「……たとえば貿易の補佐をしていたときは、利益の出ない取引とりひきが多いと感じた。仕入しい売値うりねの差が薄すぎて、輸送コストを考えると赤字になりかねない案件をそのまま通している場面があった」


「それをどうしましたの?」


「改善を進言した。聞き入れてもらえなかったが」


「なるほど」


メアリーヌがあいづちを打ってから続けた。


「では芸術の話に戻りますわ。G線上のアリアについて、商売的な観点から何か思ったことはございましたか?」


「……思ったことはあった」


「どんなことですの?」


セルヴァンは答えた。


「この曲は売れると思った。まず難易度がちょうどいい。プロの演奏家がけばもちろん美しいが、趣味で楽器をたしなむ貴族にも手が届くレベルかんだ。つまり買う人間の幅が広い曲だろう」


「……」


「そして多くの人が演奏できるということは、いろんな場所で演奏される機会が多いということで、その過程で曲の知名度も上がっていく。知名度が上がればそれだけ楽譜も売れて、売上が上がるはずだ」


メアリーヌが身を乗り出した。


「面白いですわ。続けてくださいませ」





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