夜眠れない時。そんな日に、このレビューを読んでいるあなたはどうするのだろうか。温かいミルクを飲む。何かしらの作業に没頭する。人によって対策はたくさんあるだろう。だが、こんな風にするのもいいかもしれない。
……そう、妖しく怪奇な話を聞いてみるという対策だ。
四人の妻と死別したという謎の怪談師。忌部骸。彼が話すストーリーは実に妖しく怪奇。何故か買うとお金が増える決済アプリ、デジタルで娘を蘇らせようとした父の末路。バラエティ豊かで読みやすく、そして不気味な怪談を聞いていれば、その内眠くなっていくかもしれない。
……でも、気を付けて。読みすぎると、夢の中でも彼の怪談を聞く羽目になるかも?
近代ホラーらしい‘’身近さ‘’と‘’リアルさ‘’がしっかり効いた一作でした。特に、スマホ機能など現在の生活に密着した要素から恐怖を立ち上げていく視点が秀逸で、「もしかしたら私の身の回りにも起こりそうかも」と言う生々しさが想像力を掻き立て背筋をゾッと冷やします。
また、グロテスクな描写が過度にならず、それでいて十分に伝わるリアルさがあり、短い作品ながら印象に残る場面が多いです。
ホラーとしてしっかり怖いのに、短編ならではの‘’引きづらなさ‘’とテンポの良さがあり、読後に重さが残らないのが有り難いところ。
サクッと読めるのにちゃんと怖い。そんなバランスの良さが光る良質ホラーです。