第5話 日本、資源は“戦争以外”で取れた説【改訂版】

「日本って、資源戦争するしかなかったのか」

妄想リッチに考察してみた。


太平洋戦争前の日本を考えると、よく「資源がないから南進するしかなかった」と言われます。


たしかに日本は石油を持たず、鉄やゴムも不足していました。米英との関係が悪化すれば、資源輸入は一気に苦しくなる。だから蘭印、つまり現在のインドネシア方面へ進むしかなかった、という説明は分かりやすいです。


でも本当に、選択肢はそれだけだったのでしょうか。


ここで考えたいのが、オランダです。


日本とオランダには、江戸時代の出島以来の長い関係があります。もちろん、「昔から仲が良かったから協力しましょう」で国家が動くほど、国際政治は甘くありません。


重要なのは日蘭友好そのものではなく、利害です。


日本は資源が欲しい。

オランダは蘭印産品の安定した買い手が欲しい。

満州は信用と開発資金が欲しい。


この三つを接続できれば、武力で資源を奪う以外のルートが見えてきます。


当時のオランダは、蘭印という巨大な植民地を持っていました。石油、ゴム、錫、農産物。日本が欲しい資源の多くがそこにあります。一方で、米英中心のブロック経済が強まる中、オランダにとっても日本という巨大市場は無視できません。


そこで必要になるのが、信用の仕組みです。


参考になるのが、第一次大戦後のドイツで導入されたレンテンマルクです。ドイツはハイパーインフレで通貨信用を失いました。そこで金ではなく、土地や工業資産への抵当を裏づけにした新通貨を発行し、「この通貨には実体資産の裏づけがある」と市場に思わせることで、通貨安定のきっかけを作りました。


雑に言えば、レンテンマルクとは「金がない国が、土地と産業を信用に変えた通貨」です。


この発想を満州に応用できなかったか。


仮に、満州の土地、鉄道、鉱山、農産物、工業生産力、将来の地下資源開発権を裏づけにした広域決済通貨を作る。ここではそれを「満州レンテン円」と呼びます。


日本だけでやれば信用は弱い。満州国だけを担保にしても、国際的にはかなり怪しい。


しかし、ここにオランダが加われば話が変わります。オランダには植民地経営、石油開発、国際金融の経験があります。ギルダーとのスワップや、蘭印産品の決済に使える仕組みを作れば、満州レンテン円には「日本だけの都合で作った通貨」以上の信用が生まれます。


大慶油田の話もあります。


オランダ系の石油技術や探査ノウハウが満州に入れば、大規模資源の発見が前倒しされた可能性はあります。ただし、これは運の要素が大きいです。「オランダと組めば大慶油田が見つかった」と言い切るのは強すぎます。


主軸はそこではありません。


本命は、蘭印石油を戦争ではなく、信用と市場で買い続けることです。


もし日蘭の間に長期資源協定があり、日本が蘭印石油を安定的に購入できる枠組みを持っていたらどうでしょうか。日本は蘭印を攻める必要が薄くなります。オランダにとっても、日本は危険な侵略者ではなく、蘭印産品を買ってくれる大口顧客になります。


もちろん、これだけで昭和初期を乗り越えられたとは言えません。中国問題、軍部の暴走、米英との対立、満州国の承認問題は残ります。オランダも日本を簡単には信用しなかったでしょう。


それでも、南進論の必然性を弱めることはできたかもしれません。


大慶油田の早期発見は運が絡みます。

しかし、蘭印石油を戦争ではなく信用と市場で確保する道は、当時の国際環境でも完全な空想ではなかったと思います。


軍艦で油田を取りに行くより、銀行と商社と技術者を動かして油田に近づく方が、たぶん安かった。


近代日本の失敗は、資源がなかったことだけではない。


資源を得る方法を、最後には軍事に寄せすぎたこと。


このifシナリオは、その見落とされた分岐を考えるためのものです。


ご意見感想お待ちしております。

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