冒頭の一文の強さ!
そして音楽が死んだ街という設定だけで、もう勝利が確定している。
この作者さんは、本当に舞台設定が上手い。
錆びた刃、濁った琥珀色の水面、霧の粒子――この作者さんは、言葉の選び方が直感的で、かつ正確だ。
透明な弦が放つ虹色の光なんて、読んだ瞬間に脳内に映像が浮かぶ。
ただの情景描写じゃなくて、こっちの五感に直接手を突っ込んでくるような生々しさがある。
正直に言う。この物語の一番の凄みは、このヴァルトとルカの二人が文字の上で完全に生きていることだ。
過去の罪と音楽への狂気に囚われたヴァルトの、血を吐くようなエゴ。そしてルカ——彼から与えられた対等というたった一言のために、自分の全部を差し出してしまう、あの祈るような無垢さ。二人の感情が、素材の髄から最後の一滴まで絞り出すように煮詰められていて、読んでいて痛い。でも目が離せない。
彼らの行動が物語の都合じゃなく、内側からの切実な衝動で動いているのがはっきりと伝わってくる。
読み終わった後、しばらく動けなかった。
音楽堂のクライマックス、あれは反則だろう。 ルカの声が消えていく静寂と、それと反比例するように世界を満たしていく『ヴォクス・カーヴァ』の旋律。美しいのに、ものすごく重い喪失感が残る。でもエピローグで風と共に旅する青年の姿を見て、不思議と救われたと感じた。
悲劇なのに、どこか神聖で、清々しいような。
美しさと痛みが同居する、忘れがたい作品だった。
最後にこの作者さんに贈る言葉を。
面白かった。読めてよかった。