「おっはよーございまーす!」で始まるいつもどおりのラジオ放送。
それは終末の日の前日に録られたテープ。
それが最後の放送になることは、DJもリスナーもみんなわかっていた。
わかっていて、最後の優しい茶番をみんなで作り上げたんだ。
◇
最後の日の放送に流れるのはどんな曲がいいかなと考えました。
きっと特別な曲じゃないほうがいい。普段通り過ごして、夜眠りに就くころにはすっかり忘れてしまっているような、そんな曲がいい。
オープニングはルベッツの『Sugar Baby Love』なんてどうだろう。
エンディングは清志郎さんの『JUMP』なんてどうだろう。
頼むから『アヴェ・マリア』なんてやめてくれ。
それこそ、人の数だけ候補があるのではないでしょうか。
世界最後の日を目の当たりにすることはないかもしれませんが、いつか自分最後の日はやってきます。
その時どう思いどう振る舞うか、あらかじめ考えておくのも良いかもしれませんね。
オススメです。
ぜひ。
主人公は日々を生きるために精一杯だった。
彼の朝のルーチンは〝ラジオ〟を聞く事。
『明るいラジオ』が嘘をつく、空は晴れていい天気、大事な人と過ごそう、そして素敵な日になるように、と。
『ただ生きる主人公』の対比が、眼の前で踏み躙られるものではなくじわりじわりと真綿で締め付けられる絶望として描かれており、それらが耳鳴りのように聞こえるのが流石と感じました。
それでも、ラジオは明るく嘘をつく。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も……。
世界が変えられないのはどうしようもないけど、きっと彼は明るくなれる筈。
それが、終わる事が運命付けられていても……。
午前5時。
「おっはよーございまーす」という、陽気なDJの声が響き渡る。
しかし、その声はどこからも繋がっていない。ただこの部屋で発せられるだけだ。
それは昨日も一昨日も同じ内容のラジオ。そして、明日も明後日ももし聞けたとしても内容が変わることはない。なぜなら……。
世界が終わりを迎えた時、自分の心が縋るのは、こうした日常の片鱗のようなものなのかもしれないと感じた。それによって自分は辛うじて毎日を過ごせる。
この毎日は、いつまで繰り返せるだろうか。食料も、DJの明るい声も、いつかは終るときがくるのはわかっているのにーー。
ひとりの男の居住空間で描かれる、世界の終焉のあとの物語。
ぜひその目でご覧ください。