読み始めた瞬間、圧倒的な水圧に鼓膜が軋むような衝撃を受ける、壮絶なパニック・スリラーです。
深海という極限の閉鎖空間で、残された酸素と生存を懸けた「選択」が描かれます。特筆すべきは、登場人物たちの「正義」が、水圧に潰されるように歪んでいく過程の描写です。ある者は冷徹な「数」として命を扱い、ある者は誇りを守るために地獄を招き、そして生き残った者たちは、ただ生きるために「獣」へと退化していく。
何が正解で、誰が狂っているのか。ページをめくるごとに酸素が薄くなっていくような錯覚を覚えるほどの緊迫感。読者は、凄惨な闇の底で「自分ならどうするか」という、あまりに残酷な問いを突きつけられることになります。
魂の震えが止まらない、深淵の底に触れる傑作です。