とても描写技術の高い作品です。
獣人世界と言う世界観ですが、獣人の身体、空気感、建造物も、
しっかりと場面を見たうえで書いているかの様で、
否応なしに見える情景が、その世界の観察者にさせてくれます。
ネタバレなので先の話はあまり書かないでおきますが、
二章の軋む船の表現は特に目を引かれました。
冒頭、主人公は困惑と不安の中、獣人だらけの監獄で目覚めます。
そこで自分は何なのか、少しづつ解き明かしながら、
物語は自由に向けて一歩一歩重厚に進んでいきます。
この先主人公は獣人たちとどういうコミュニティを形成していくのか。
どんな獣人出てくるかなというのもひそかに楽しみながら、
読みたいなと思いました。
記憶を失った主人公が目覚めると、異世界の監獄「リンプイン監獄」に囚われていた——
そこから物語は立ち上がっていきます。
そこには鳥人、鬼人などの種族が収監されており、彼らは特殊能力を持つ「国家の資産」として管理されている。
この発想にまず驚かされ、一気に物語世界に没入しました。
監獄で出会う者たちは誰もが個性的で、一人ひとりのキャラクター造形にしっかりと厚みが持たされていることが伝わってきます。
記憶喪失の主人公は戦闘能力もなく、最弱でのスタートを切りますが、不慣れな環境に立ち向かっていく姿に惹かれました。
やがて物語は監獄サバイバル編から賞金稼ぎの冒険者編へ移行していくのですが、軍国や自由都市など世界がどんどん広がっていき、ずっと先行きが気になる構成が見事。
危険な依頼や冒険は、読めば読むほどワクワクする気持ちになりました。
個人的に印象的だったのは、生きた魔物の素材で作られた船「ジャンバラヤ号」。
これは強烈で、もはや船そのものが生き物のようでもあり、ぜひ映像で見てみたいと感じたものです。
今は国家レベルの陰謀を予感するところを読んでますが、先の展開が楽しみです。
サバイバルあり、冒険あり、巨大な陰謀ありの物語をぜひ多くの人に楽しんでいただきたいです。