「掃除」の一言で人が死ぬ。この言葉選びだけで作品の色が決まっている。
主人公が死体であるという設定が秀逸。心臓も肺も止まっている、ヴィオラの魔力で動いている。つまり彼女がいなければ文字通り死ぬ。「決して裏切らない味方が欲しい」という願いが、「離れたら死ぬ」という物理的な絆に変換されている。感情の依存を身体の依存に置き換えたことで、二人の関係に有無を言わせない説得力が生まれている。
ヴィオラの二面性が良い。袖の端をおずおずとつまんで手を繋ごうとする少女が、次の瞬間には兵士の足を手刀で切断する。「掃除の続きですね」と満面の笑みで言う。この落差がキャラクターの魅力そのもの。狂気と純愛が同居していて、どちらも嘘じゃない。
即追手が来る展開も良い。村で無双して終わりじゃなく、すぐに国を追われる状況に転がす。そしてエレアノールの登場で「ヴィオラと同格の敵がいる」と示す。ここで初めて読者に緊張が走る。最強だと思っていた味方に、並ぶ存在がいる。この時点でこの提示ができているのはテンポが良い。
「血の海の上で、俺は今までの人生で一番穏やかな気分を味わっていた」。この一文が全て。壊れた人間と、壊れた世界の中で、二人だけが噛み合っている。その歪んだ安らぎに読者が共感できてしまう構造が、この作品の強さだと思います。
続きを楽しみにしております。