「僕」は、腕白な様で、森を走り回ってよく遊ぶ。
森から感じられる春の気配に包まれながら、今日も「僕」は森を駆ける。
野兎を見て、それを可愛いと感じるのが、「僕」。
野兎を食べるより、野兎を愛でる事を好むのが、「僕」。
「僕」は森の中でも無敵で、「僕」を見つけた野生の動物も逃げ出していく。
そんな中、「僕」は白い花を見つけた。
お母さんが好きな、白い花。
名前も分からない花だけど、お母さんが好きなら、それでいい。
花を気にして、「僕」は走る事をやめ、歩いて帰路につく。
それでも「僕」はお母さんに、その花を早く見せたくて溜まらない。
森の散策も「僕」の楽しみだけど、やはり一番落ち着くのは、我が家だ。
「僕」とお母さんとの「絆」は、その白い花。
自分では育てる気はないけど、お母さんはその白い花がとてもお気に入り。
何気ない「僕」の一日は、今日もお母さんとの会話で締めくくられる。
お母さんは、今日も「僕」に優しい。
プロローグの詩が、すべてです。「私は石ころ」という一行から始まり、「やがて砂になり、水に溶けて、大地になる。そうして少しだけ、あなたに近くなる」という着地まで——別れを悲劇として描かず、変容と連続として捉え直す視点に、読んでいる側の呼吸がそっと変わりました。
本編の「僕」と「お母さん」の日常は、会話の一つひとつが小さな愛情の確認です。白い花、碧の花瓶、森の光——舞台となる空間の描写が映像として浮かぶほど丁寧で、「淡い水彩画のような」という既存レビューの言葉に同意します。説明せず、感じさせる文章の力がある作品です。
プロローグの「さよならは必然だった」という言葉が、本編を読み終えた後に違う色で見えてくる構成も巧みでした。2,600字という短さの中に、春の温かさと別れの予感が静かに共存しています。福山蓮さんの作品群の中でも、最も静かで、最も余韻の深い一篇だと感じました。