第20話 深夜の水着鑑賞会

 足立さん、音羽さんと水着を見て回った日の深夜。入浴を終え、日中の疲れもほどほどに溜まったところで、自室の椅子にもたれる。

 来週末に控えた四人でのプール。俺はそこで雲雀と足立さんの距離を縮められるように誘導する必要がある。

 当日の動きを踏まえて、二人きりになれる状況を作る必要がありそうだ。


 あと気になるのは、音羽さんとの契約について。この契約が音羽さんにも都合の良いとは、どういうことだ。


「でもまあ、足立さんと雲雀に関係あるわけじゃないしな……」


 目的は足立さんと雲雀の復縁。そこに影響がないなら、別に後回しでもいいかもしれない。


 そう考えたところでスマホが震える。足立さんから通話のお誘いだ。俺はすぐに承諾する。


『もしもし、ちょっと時間ある?』


「もしもし? あるよ」


『良かった。んーと、ちょっと待ってね』


 程なくしてビデオ通話に切り替わる。程なくして、お風呂上がりの足立さんが画面いっぱいに映る。

 画面端には、部屋着のライトグレーの薄い布地がわずかに映っている。


『わ、近い近い。見えてる? っていうか……そっちもつけなよ』


「あぁ……うん」


 俺もビデオ通話に切り替える。俺の顔が映ると、足立さんは軽く笑みを作り、手を振った。


『あ、見えた。こっちも見えてるよね?』


「うん。それで、今日は何か用だった?」


『用があるからかけてるんだよ。今から渡のために水着に着替えるから、率直な感想をどうぞ』


「え……? えっと……。あぁ……ありがとう!!」


『どういたしまして。じゃあ着替えるね』


「……ここで?」


『カメラ外で』


「あぁ……びっくりした……」


『ん、見たい? 私が着替えてるところ』


「いやいや……流石に雲雀に怒られるから。そんなことは軽々しく言えませんよ」


 欲望に従うならもちろん見たい。


『今はフリーだから合法なんだけどな〜。やっぱり渡ってヘタレだよね』


「え、マジで……?」


『ばか。クラスメイトに欲情するな』


 そう言って、足立さんはカメラ外で着替え始める。ただ、スマホのすぐ側なせいで、たまに腕や髪がカメラの中に入っている。


 そんなことに浮ついたまま数分。水着姿の足立さんが画面に現れた。

 足立さんが選んだのはビキニだ。トップスは大きいフリルがついていて、下はスカート仕様。薄水色の生地が爽やかで、可愛らしさもある。

 比較的露出が控えめな水着だが、腕やお腹、足は太ももから足先までしっかり見えている。もちろん、どこを見ても綺麗だ。


『…………その、どう。私の水着……』


 少し上擦った声で俺に問う足立さん。恥ずかしいのか、自分の腕にきゅっと手を添えている。

 だが、そうすることでさらにプロポーションの良さが際立つ。胸は比較的控えめだが、引き締まったお腹。くびれは滑らかな曲線を描いている。


「…………」


『……あのさ、黙ってないで何か言ってよ。私も恥ずかしいんだから……』


「え、あぁ……。その、似合いすぎて……言葉も出なかったというか……」


『ふぅん……? そんなに可愛いんだ、この水着……』


「いや、水着というか──」


 まあ、良いか。足立さんをヨイショするのが俺の役目だし。


「その、足立さんは可愛いし、似合ってる水着を着れば、そりゃあもう雲雀もいけるよ」


『…………そ』


「うん……」


 恥ずかしそうに目を逸らし、そわそわしだす足立さん。妙にしおらしいから、こちらにも緊張が伝わってくる。


 まずい、茶化したい。ビキニだからお尻がはみ出てますねとか、おじさんムーブしたい。

 でも、そこは相談役として、衝動を抑える。


『その、さ。やっぱり不安がちょっとあって。渡にもう一度見てもらった方がいいと思って』


「うん」


『来週末なんだよね? 紫咲くんも入れて、四人でプール……』


「うん。その時に、足立さんには雲雀と良いところまで行ってもらいたいって思ってる」


『そう……』


 やはり自信なさげな返事が返ってくる。

 

「俺と音羽さんで雲雀と二人きりになれるようにするから、今は何を話すか考えて。それから、別れてから気まずいだろうし、足立さんには出来たら雲雀をプールに誘って欲しい」


 もちろん俺からも雲雀を誘ってみる。二人からお誘いなら、変に怪しまれないだろう。


『うん、私もそれが良いって思ってた。じゃあ、考えとくね』


「ああ。困ったことがあったらいつでも相談乗るから」


『ありがとう。多分、メンタルケア頼むかも……』


「得意だよ」


 程なくしてビデオ通話を終える。先ほどまで映っていた足立さんの部屋が消える。

 もう少し足立さんの水着を見たかったが、罵られそうだったので、こればかりは仕方ない。

 もう一度衣擦れの音が聞こえる。

 程なくして、足立さんの溜め息がイヤホンから届く。


『はぁ……。本当にうまくいくのかな……』


「いけるよ。頑張って」


『うーん……紫咲くんの気持ちが分かったら早いんだけど……』


 こればかりは俺も分からない。結局答えは雲雀自身というほかない。


 次回は来週末。それまで準備を怠らないように進めておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る