第39話 四天王筆頭
「ビュラはそっちの聖女をやれ! 終わるまでこの勇者は生かしておいてやる。あとでたっぷりと身の程を教えてやれ! もっとも半死半生かもしれんがな!」
フェルルムの舐めたセリフが俺を苛立たせる。しかし……
覚悟を決めるしかないのか? だけど雷撃は効かない…… あいつの体は磁石になっている…… 考えろ考えろ。
俺は再び剣を構えた。
(これしかない)
そう思いながら、体全体に電気を纏わせる。こいつは金属だ、ビュラと違って実体は消せないはずだ。
俺の体全体を雷に変える。いくら避雷針だといっても剣はそのまま刺さるはずだ……
体が帯電していくのが感じられた……
そして……
俺は叫びながら突っ込んだ。もうなりふり構ってはいられない。
「うおおおおおおお!」
フェルルムは動かない。相変わらず余裕の表情だ。
雷となった俺の体ごと剣先がフェルルムの喉もとへ突き刺さる! おれのスピードとお前の磁石の力が合わさっているんだ、生半可な力じゃないぜ!
(よし! 決まった!)
だが、刹那、目の前のフェルルムがニヤリと笑った。
剣は刺さらなかった。硬すぎて剣が通らなかった。それどころか、剣に纏った雷撃までもが奴の体に吸い込まれてしまう。
一瞬、時間が止まったように感じた。
フェルルムの金属の体にはスキルを纏った聖剣も通じない! スキルじゃない、純粋な剣技として、それが達人級なら突き刺さったとでもいうのか? 俺にはチートがあるはずじゃないのか?
「馬鹿な!」
思わず叫んだ瞬間、俺はフェルルムに殴り飛ばされた。俺の体が聖剣ごと、きりもみしながら宙を舞った。そして大地に落ちる前に、再度、俺の体は強い力に引き寄せられ、再びフェルルムの眼前で、また殴り飛ばされた。そしてまた引き寄せられ……
結局、四度、同じことが続いて、俺は意識を失いかけていた。
***シズクの独り言
まあ、あんなものね、あの馬鹿じゃ、フェルルムには普通なら勝てっこないもの。だけどあの馬鹿には、自称主人公の「補正」とやらが働いているらしいから、ひょっとすると…… それにしても面倒ね、ビュラとモルブス…… 雑魚キャラのくせに。
いい加減、ケリをつけようかしら、あの馬鹿はこっちを見る余裕なんてなさそうだし…… 悪いけどアンタたちじゃ、遊ぶ気にもならないの。
……の断罪、発動。
―――
フェルルムの醒め切った顔が俺に迫って来る。
なんだ? なにが起こった?
考える間もなく俺はまた大地に叩きつけられた。体中の骨が軋んでいるかのように感じられ、痛みで息ができない。
「残念だが、雷の使い手とは何度も戦ったことがあってね。今のはそれらの戦いの中で身に着けた技術だ。特に技などではない、自然とそうなるのだよ。強いて言えば相性というものか」
訳がわからない。自然とそうなる、だと。だが、相性が悪いっていうのは理解できる。くそっ、これが魔王相手なら、楽勝だったのに、こんなところで躓くなんて……
俺は口をパクパクさせながらなんとか息をしようとしている。俺の耳にフェルルムの足音が近づいてくる。
(逃げるんだ!)
だがどこに?
ふと目を向けた先に、俺はここが目的地に近い事を知る。崖下だ、偶然とはいえ、ここへ飛ばされたんだ。これが主人公補正か!
(上へ!)
俺は這いつくばりながら上へと逃げようとした。うしろでフェルルムが溜息を吐きながら、肩をすくめる気配まで手に取るようにわかる。だけど今はこれしかやれることはない。
振り返ると、フェルルムは崖を見上げていた。そしてかすかに嗤うと言った。
「良いことを思いついた。お前の努力に免じてチャンスをやろう」と。
そしてさらに言う。
「もしあの上までたどり着けたなら命を助けてやろう。だから死ぬ気で頑張ってみろ」
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