十章 滅びの都

第155話 今後の方向

 言葉が悪いがクソみたいな祭りも終わった。冒険者ギルドへ提出していたアイテムなども戻ってきたので、クランマスターであるラシアが責任を持って取りに行った。


 今日は持ち帰ったアイテムを、天城ダンジョンへ行ったメンバーで分けることになった。


 モンスターがフロアを移動してくるという大変なこともあったが……楽に倒せるなら、向こうからアイテムを持ってきてくれるということでもあるので、正直かなりの儲けだった。


 もう行かないけど。


 魔石や換金アイテムは冒険者ギルドで売っぱらってきたので、今回持ち帰ったのは装備や消耗品などだ。


 それをグオンが借りている家で分ける予定だったが……おやっさんとセレットさんも、元冒険者として未踏破ダンジョン産の品がとても気になるらしい。


 そのため宿は臨時休業にして、食堂で分配することになった。


 少し狭い気もするが……大丈夫だろう。


 ちなみに虹竜と灰竜まで入ると狭いので、中庭にいる。


 そしてラシアが皆に報酬を分けていく。


 水没ダンジョンと天城ダンジョンを踏破し、水没ダンジョンではボスも複数回倒している。そのため分配金は、一人当たり三百万セル近くの大金となった。


 数日潜り、命の危険も確かにあったが……力のある者が冒険者になりたがるのも分かるなーというのがラシアの感想だ。


 で、ここで分かるのが誰が金を持っていて、誰が持っていないかだ。


 ラシアのクランメンバーは、リレッサとノアも含めて皆すごく喜んでいる。リレッサに至っては、冒険をして初めて稼いだお金だ。嬉しいのも当然だろう。


 パルサー、ティーガー、お兄さんお姉さんズは、まぁこんなものかといった反応だ。どちらかというと金は持っているので、アイテムの方が気になるといった感じだ。


 フウコウは……自分達の取り分の三分の一ほどを手元に残し、残りはクランの資金に回すとのことだ。


「もう……ラシアのクランと合併した方が楽な気がしてきたにゃ」


「いきなり十人以上メンバーが増えるのは勘弁してください」


「おみゃーはそれでよくグオンの所と合併したにゃ……」


「姐さんの性格を考えたら、俺らもよく合併できたなーとは思うな」


「にゅうん? 何かコツとかあるかにゃ?」


「そうだなー……酔った姐さんにしばかれたらいいんじゃねーか?」


「うぐっ」


 ラシアが変な声を漏らし、そのことを知っている者達は何とも言えない顔で笑った。


「なんや? ラシは酒飲んで暴れたんか? おもろそうやんけ。その辺詳しく聞こか」


「やめてください!」


 それ以上は絶対に話さないようグオン達に釘を刺し、ラシアは装備やアイテムを取り出していく。


 この辺をうまく分配するのは大変だが……ある程度は適当でいいことにしてもらおうとラシアは思う。


 まずは天城ダンジョンの武器庫みたいな所で手に入れた、天上の鎧のセット。


 ゲームでは天使や戦女神などを倒し、メイルやグリーブといった各パーツを集める装備だった。


 それが一式まとめて手に入ったのはデカい。


 グオンに装備してもらってもいいが……今回はパルサーやティーガー、お兄さんお姉さんズに譲渡するのが一番いいと思う。


 別にグオンに似合わないという理由ではない。


 いつものことだが、かなり助けられた。彼らがいなかったら誰かが確実に死んでいただろうし、踏破することも不可能だったかもしれない。


 それにゲームでは、エンセトやダードのレベルでは装備できない。この世界なら身につけること自体はできても、まともには扱えないだろう。


 実際、グオンにラシアのプラティディオンハンマーを持たせた時もそうだった。気合を入れれば持ち上げられたが、両手でも振ることはできなかった。


 この鎧セットがどうしても欲しいというならダードやグオンに渡してもいいが、本人達はそこまで欲しくないとのことだ。四セット全てパルサー達に渡してもいいと思う。


 ラシアも聖銀鋼の鎧があるので必要ない。


「いいのか? 父さんが狩猟祭でかなり儲けたみたいだからな。騎士団として買い取ることもできるぞ?」


 何それ? と思い詳しく聞くと、狩猟祭でデゴットがかなりの金額をラシアに賭けていたそうで……軽く見積もっても、王都の一等地に新築の豪邸が建つそうだ。


 それでいいのか騎士団、と思ったが……まぁいいか。


 お金のこともあるが、王都の貴族には頭のおかしい者も多い。何かあった時には情報が欲しいし、今回のような危険なダンジョンへ行く時には協力してもらいたい。


 天城ダンジョンでさえ、あれほど危険になっていたのだ。他のダンジョンや超級が、どれほど危険になっているか分からない。


 よく言えば仲良くしておきたい。悪く言えば、今のうちに恩を売っておきたいのだ。


 そのことを皆に説明すると納得してくれた。こうして天上の鎧はパルサー達に渡すことになったが、そこで少し問題が出る。


 レクトアはビショップなので除くとしても、鎧を欲しがる者は五人いる。それに対して用意できるのは四セットだけだ。


「って……ことは、一人は無しになるってことやな。どう勝負つける?」


 こういう時は結託して多数決を取る方が早いらしい。


 いつ話し合った? と疑いたくなる結果になった。


「いや……ティーガーが無しだ。私、ラオメ様、アトラス様、ヘッジ様の総意だ。レクトア様を入れてもいいが……こちらの味方だ」


 ティーガーが慌てて周りを見ると、今名前を挙げられた全員が頷いた。


「なんでや! 普通にいつも通り、何かの勝負で決めたらええやんけ!」


「駄目だ。負ける可能性は排除する。私達も新しい鎧が欲しいからな! それにお前はドラゴンに乗っている。我慢しろ」


「そんなアホみたいな理由あるかい! ウチかて新しい鎧が欲しい!」


「駄目だ。ここには騎士団と聖騎士の上から数えた方が早いお方達がいて、その方々がそう決めたからな。私達が口出しできる立場ではない。それにお前は前に言っただろう? 上が決めたことに口出しできる立場になっていないのが悪いと」


「確かに何か似たようなこと言うたような気はするけどもや!」


 とまぁティーガーの抵抗はむなしく、天上の鎧はパルサーを含めた四人の元へ行くことになった。


 ラシアとしても、お兄さんお姉さんズは明日からエンブレント嬢の捜索で古代のダンジョンへ行くので、少しでも装備の性能を上げて無事に帰ってきてほしいと思う。


 ちなみにラシア、ティーガー、パルサーもその捜索に参加しようとしたが……確実に揉める原因になるのでやめておけと、デゴットから忠告されている。


 そして天上の鎧をおやっさんに手直ししてもらっている間に、他のアイテムも分けていく。


 消耗品や食材になるアイテムはラシア達のクランがもらい、短剣やショートソードなどはフウコウやダード達が引き取った。


 そして目玉商品のヴァルキリーシールドだ。


 グオンに持たせたいところだが、彼が持っているドラゴンシールドも性能はわずかに劣る程度だ。それならダンジョンでも使用していたラオメに売るのが一番だとラシアは思う。


 ただ少し問題がある。この世界にはなかった装備だけあって相場が分からないのだ。


 グオンのドラゴンシールドも素材を集めて作った物だが、同じ物を買えば七百万から一千万セルはするらしい。


 ちょっと金銭感覚がバグっているのが冒険者だ。


「というわけで値段が分からないのが問題でして」


「三千万セルぐらいなら……すぐに出せるが、それ以上となると少し待ってほしいところだ」


 ラシアは目眩を覚えたので……とりあえず五百万セルほどで売却した。文句があるなら相手をしましょう、とだけ伝えて黙らせた。


「ラシア殿、感謝する。このぐらいの盾になると姉でも持っていないから、帰ったらすぐに自慢しようと思う」


「へー。ラオメさんってお姉さんいるんですね」


「ああ。ラシア殿も見ているはずだ。デルパロア家の食事会に陛下が来ておられただろう? あの時、陛下の隣で護衛していたアークパラディンが姉だ」


「……聞かなければよかった! お兄さんお姉さんズと呼びにくくなりそう!」


「そう雑に呼ばれるのは気に入っているからな。ラシア殿は気にせず、そのまま呼んでくれ」


 このまま聞いていないふりでいこうと、ラシアは心に決めた。


 続いて出てきたのは、水没ダンジョンで手に入れたトライデントだ。これがまた大問題だった。


 ラシアのクランには槍を扱える者がいないため売る気満々なのだが……買う気満々の者がここには二人いる。


 ルーンランサーのパルサーと、ロードランサーのヘッジだ。


 何というか、絶対に自分が手に入れると言わんばかりに二人から殺気が出ている。


 迂闊なことは言えない。


 ラシアはとても困ったので、リレッサに助けを求めた。


「何かいい方法……ですか。ラシアが使っていた分裂の小壺には入りそうにありませんし、騎士団と聖騎士の方々でオークションをしてみては? 落札額の一割ずつを両方に寄付する形なら、反対意見も出ないでしょうし」


「いや! 待ってほしい。それをやると私の手に入らない可能性が!」


「今、騎士団で一番金を持っているのはデゴット様だから少し待ってほしい!」


「採用!」


 二人の槍使いを無視して、ラシアはリレッサの案を採用した。


 その開催はラオメが責任を持ってやってくれるとのことなので、ラシアは色々と任せることにした。


 それからも揉めないように頑張って分けていき、ようやく終わったのだった。


 自分のクランだけでも大変なのだが……フウコウ達や騎士団、聖騎士までいると本当に大変だなーというのがラシアの感想だった。


「……つ、疲れた」


「ラシアさん、お疲れ様!」


 ノアにねぎらわれ、そうして慌ただしかった一日が終わった。


 翌日、ラシアはデルパロア大公宅へと向かう。


 超級ダンジョンのことを聞くためだ。

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