第109話 緋闇のダンジョン

 本日のクラン狩りは緋闇のダンジョン。闇の中に緋色が浮かび上がるからとか、そんな感じだ。


 闇は夜の事。緋は目の事。


 このダンジョンは二つに分かれている。ラシア達が行く方はいわば庭で、もう一つは奥にある屋敷のダンジョンだ。


 そこにいるボスがヴァンパイアロード。こいつの目の色が緋色なので、そんな名前のダンジョンだ。


 ロードとか大層な名がついているが、動物種が進化したキング種よりは弱い。コアラキングとかMr.フェンリルとかカーツ首領などなど。


 そしてどちらのダンジョンも闇や不死の属性が多いので、パロドワが覚えた聖属性付与がとてもよく効く。


 基本的にはボスモンスターよりも時間湧きのボスの方が強い。

 だが……依頼のスカルライダーは不死属性で、火も聖属性もよく効く。


 ……少し危ないが、ラシア以外のメンバーだけでも倒せるのではないかと思う。


 緋闇のダンジョンは他に厄介なのも多いので、そちらを警戒したい。


 あとは……この世界だと少し手間がかかる。距離があるのか、ラシア達が拠点としているルインエルデからは繋がっていないので、王都の冒険者ギルドへ行ってからとなる。


 手続きはルインエルデでできるので楽なのだが……少し面倒くさい。


 王都に行き、ポータルに並んでいると、王都はノアのホームグラウンドだけあって知り合いが多いようで、よく話しかけられる。


「あっ。ノアだ! 久しぶりー元気にしてる?」


「あー! 久しぶり! 元気元気! 凄い元気だよー!」


 そんな感じで知り合いと話し出したので、聞き耳を立てる訳でもないが……話は聞こえてくる。


 ノアが前にいたクランのリーダーであるリュートリアのランクが上がって、Xランクになったそうだ。


 あとは全体がSやAという感じで構成されていて、かなり強いクランになっているという話だった。


「Xランクって事はグオンさんより強いのか。それは普通にすごい」


「姐さん。ランクなんてピンキリっすよ。それを言い出したら姐さんがSというのがおかしいですからね。それはそうと騎士団から今回は依頼ですからね。がっつり頂きやしょう」


 と……グオンは言うが。デゴットと依頼料の話はしたが……そこまで高くはない。言えばもらえるとは思うが……ラシアは騎士団というかデゴットにリレッサの事で恩がある。


 リレッサのことが公になってないのはデゴットが黙ってくれているのもあるのだろう。


 流石に恩がデカすぎる。クランメンバーからすればリレッサの事は関係無いし、お金は多く欲しいだろう。別にラシアはお金には困って無いのでラシアの分を抜いて全員で割れば、そこそこな額になるのでそれで良いと思う。


 無茶を言われている訳でもないので騎士団の依頼に関してはこれでいいと思う。余程の時は一人で行くし断る事もできるからだ。


 なんて事を話していると、少し辺りが騒がしくなった後に、奇妙な集団が現れた。


 なんというか少しぽっちゃりした感じの青年が、豪華な鎧に身を包んでいる。たぶん聖騎士だろう。

 数名が護衛として同行し、冒険者もいる。


 そこまでは分かるのだが……それとは別に、少なくとも十名以上のみすぼらしい格好をした奴隷? にしてはガタイの良い者達が連れられている。


 ……そして聖騎士の中にロワンテもいる。あの人は超絶苦手なので、グオンの影に隠れる。


 そして先ほどより小さな声で話を続ける。


「姐さん。ああいうのは見ない方がいいっすよ。あのみすぼらしい服装の男達の中に、背の高い奴がいるでしょう?」


 ラシアは目だけを動かしてその方向を見ると、確かにいた。何というか、パッと見た感じだが少し危ない感じがする男だった。


 その男の事をグオンは知っているようで……冒険者や一般人の殺害など、かなりの罪を犯している者だった。


 他にもフォルグが知っている顔があり、大体の者が犯罪者か、その辺りの奴隷との事。


「たまにああいうどうしようもない犯罪者を連れて、ダンジョンで処刑するって話です。まぁ俺らも直接見たことはないんで、噂ですがね」


 なるほどとラシアは呟くが……たぶん違う。


 処刑するだけなら……ダンジョンに行かなくても良いし、ロワンテのような強者も必要ない。あの中には戦えない者も混ざっていると思う。


 ……まさかこの世界でやる奴がいるとは思わなかったが……あれはレベリングだ。


 あの人達をモンスターに倒させて、モンスターのレベルを上げてから、貴族か、もしくは聖騎士の若者達が倒す。


 ターゲットの管理さえしっかりして、動きを封じてしまえば、戦えない者でも楽にモンスターを倒せる。


 ゲームでも友人同士が助け合って、サブキャラとかのレベルを上げる。楽だし、とても効率が良いからだ。


 だけどそれはゲームの話。……現実でそれをやるのはどうなのって思うが……この世界の人達が何も言わないなら、それがルールなのだろう。


 こないだ戦ったギュスターブのおかげで、確実にレベルは存在する事が分かった。


 ダード達が強くなっているのも視覚化はされていないが、ゲームで言うならレベルが上がっている。職のレベルもちゃんとあるから、ドラゴンナイトやルーンランサーがいる。


 ラシアから言う事はないが……ゲームと違う世界でそれをやる危険は分かっているのだろうかと思う。


 モンスターが人を何人倒したかなど分からないのだ。Mr.フェンリルみたいに最終進化が短い奴は……もうすでに何人か倒している可能性もある。


 モンスターがモンスターを倒してレベルが上がるのも確認済みだ。

 範囲攻撃で一斉に、となったらどうするのかなーと……


 人を裁くときは人の手だろうとラシアは思う。モンスターに法はない。


 かといって勘違いという事もあるなと考えていると、ようやくラシア達の番がやってきたので、ポータルを抜けて緋闇のダンジョンへと向かった。


 ……


 ゲームだとそこそこ暗いダンジョンだが……この世界だと想像以上に明るい。満月がこんばんはしているからだ。


 ノアとグオンは一回か二回来た程度で、他のメンバーは来た事がないとの事だ。


 正直それは分かる。ボス以外はドロップアイテムも美味しくはないし、遠距離型が多いので少し面倒だからだ。


「それでラシアさん。スカルライダーはすぐに見つかるの?」


「はい。そこそこ大きくて、骨馬やチャリオットの車輪が光ってるので、いたらすぐに分かります。凄い速度で走っているので砂埃も凄いですし、かなり分かりやすいですよ」


「なるほどー。じゃあ周りを警戒しないと駄目だから、いつも通りでいいって感じ?」


「はい。ですが……月から糸のような物が伸びていたら、すぐに教えてくださいね」


 分かった、とノアが言うのに合わせて、少しばらけながらスカルライダーを探し始める。


 この緋闇のダンジョンにいるモンスターは、ウルフマン、ラビットマンバリスタ、ヴァンパイア、マウスマンウィザード、ブラドスライム。


 強敵という強敵はいないが……気をつける事はモンスターの進化だ。ウルフマンが十回もプレイヤーを倒すとMr.フェンリルになる。


 だけどラシアは本気で戦えるので、こいつは特に問題なし。いても味方が襲われる前にたぶん倒せる。


 問題はこいつら。ラビットマンバリスタとマウスマンウィザードだ。こいつらは範囲攻撃持ちで、モンスターがモンスターを倒してもレベルが上がる。


 で、ヴァンパイアが雑魚コウモリをそこそこ召喚する。もしそれを範囲攻撃で巻き込んだら? となるのだ。


 マウスマンウィザードは進化するとウォーロックマウスマンになって、最後はクイーンマウスマンになる。強いのは強いが、魔法使いの特性を持っているので接近戦には弱い。近づきさえすればグオンでも倒せると思う。


 ラビットマンバリスタが大問題。


 ラビットマン→ラビットマンスナイプ→ラビットマンバリスタ→カグヤちゃん→カグヤちゃんDXになる。


 カグヤちゃんになるとウサ耳の生えた可愛いモンスター娘になるのだが……


 カグヤちゃんDXはデラックスではなくダブルエックス。こう……サテライト的な高射程高威力の魔法的な矢、というかビームをぶっ放してくる。


 このエリアでは滅多に出ないが……いたら月が出ているので撃ちたい放題になる。


 だが、プレイヤーにも恩恵はある。常に月が出ているので魔法職は魔力が上昇し、ラシアも常にムーンライトコンタクトが使えるエリアだ。


 いたら即座に撤退。ゲームでも、ボスを含めて全てのモンスターの中で、もっとも射程が長いのがカグヤちゃんDX。


 月から糸が見えたら逃げよう。


 やられたプレイヤーの名言だ。


 数人に注意して月を見てもらいながら探していると……ブラドスライムをダードが発見した。


「ラシア! スライムいるけど倒していいか? 深緑のダンジョンでスライム探してなかったか?」


「あっ、それで良いのでいります! 少し実験するので離れていてください」


 倒すとか言っているが……スライム系は動きは遅いが総じて強いので、たぶんダードでは無理だ。


 ラシアが何の実験をしたかったかと言うと、スライム種には物理攻撃無効の能力を持った物がいる。スライムもそうだが、このブラドスライムも持っている。


 レイスみたいな実体がないモンスターなら分かるし、アクセサリーの混乱無効とか麻痺無効もなんとなく分かる。


 だけど……物理攻撃無効って何? って話なのだ。


 ラシアはプラティディオンハンマーを取り出して、とりあえず思いっきり殴った。

 凄まじい衝撃が発生し、近くにいたダードを吹き飛ばし、ついでにブラドスライムもお星様になった。


 消えたのかと思ったが……魔石が残ったので、ちゃんと倒されたようだった

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