第110話 国交樹立記念パーティー9
数分後、待ち構えられていると気付かずに、襲撃者達はパーティー会場の明かりを消し入って来た。
扉や窓が開け放たれていたので侵入自体は簡単だったろう。
侵入者達は、侵入されたことにも気が付かず呑気にパーティーを楽しんでいるであろうルミナス王国の人々を舐めていた。
明かりを消し会場が暗くなった程度の混乱を起こせば簡単に依頼は達成できると、自分達にはその能力があると自負していたのだ。
確かに、侵入者達の能力は本物でありこの男が居なければ依頼は達成されていただろう。
そう――
「『パラライズ』『ライト』」
――敵味方関係なく動けなくさせれば解決するよな、とパーティー会場全体に、例え耐性があろうとそれをものともせず、麻痺魔法をかけれてしまう。
誰にも配慮せず、己は早く帰りたいからと力業で全てを終わらせてしまう男。
シリウス・ウォーカーが居なければ。
シリウスが居る場所に襲撃なんてしてしまったことが、侵入者達の最大の失敗なのである。
「あ、居たな『バインド』」
そして、ライトで会場を照らし侵入者を見つけたシリウスは人数を確認し、全員いることがわかってから侵入者達に捕縛魔法をかけて、侵入者達以外のパラライズを解除した。
「護衛終了」
「オメェ一声掛けろや!驚くだろうが!」
「メンテナンス代金なのだからこんなものだろう?」
「そーゆー問題じゃねぇ!」
親方がシリウスに文句を言う。それは当然の権利であるし、圧倒的にシリウスが悪い。
そして全く自慢出来ることではないが、クリストフ王子はパラライズ慣れしていたおかげで精神的な復帰が早かった。
言い合いを始めた2人を見て親方頑張れ!と思いつつ近衛騎士達に捕縛の指示を出す。
「明かりを戻せ!侵入者の捕縛と身体検査!魔力封じと毒物の確認急げ!」
「「「「「ハッ!」」」」」
クリストフ王子の指示で『パラライズをかけられたショック』から立ち直った騎士達は素早く行動に移した。
親方の文句を耳を塞いで無視しながら彼等の動きを見て『そんなに有能なとこ見せて大丈夫か?』とクリストフ王子が心配になるシリウス。
人は有事の際に動ける人を見ると二割増しくらい美化する生き物なので、これから王子が情けない事をした場合、反動が凄いのではないかと思うのだった。
(上げて落とすとショックがでかいと言うしなぁ……本人もチラチラ国王見てるし、勢いで指示だししたもののやり過ぎるのはマズいと気が付いたんだなぁ)
「……後の指示は隊長に任す」
「ハッ!…殿下、どちらに?」
「友人の安否を確認する」
有能なところを見せすぎたと判断したクリストフ王子は、噂が広がる前に一旦評判を落とすことにしたようだ。
――近衛騎士の隊長へと指揮を任せて何処かへ向かおうとするクリストフ王子に、当然ながら隊長は行き先を訪ねる。
すると、返ってきたのは友人の安否を確認するという言葉。それ自体は、まぁ友達想いですむかもしれないが、向かうのはマリア嬢のところである。
そして、クリストフ王子による即興演技が始まった。
「マリア無事だったか?」
「はいっ!でもぉ、怖かったですっ」
「もう大丈夫だ。だが君が心労で倒れてしまっては大変だ、直ぐに馬車を用意させるから気をつけてお帰り。私が送ってあげられたら良かったんだが、まだ後片付けが残っていてね……」
「そんな!クリス様のお気遣いとても嬉しいですぅ!お仕事を頑張るクリス様も素敵ですけど、無理はしないでくださいね?」
「ありがとうマリア、君の言葉があるから私は頑張れるよ」
いきなり始まったやり取りに、会場の人々は『何を見せられているんだ?』という気持ちになったが、口を挟める雰囲気でもなく見守るしかなかった。
(す、すげぇ、キラキラエフェクトが飛んでそうな王子様演技を見せられている!)
あまりの演技の上手さに、シリウスは後日本当にマリア嬢に惚れていないのかとクリストフ王子に確認したのだが「勘弁してください」と物凄く嫌そうに言われてしまい、改めてクリストフ王子の演技力を褒めたのだった。
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