第35話 マナー講座6
多くの生徒が待ち望んだマナー講座最終日。
学園の中庭に用意された最高級の道具の数々に、品良く飾られた花々。
多くの生徒達はシリウスが会場の用意をしていたのを見ていたが、まさか王宮、それも王妃のお茶会に匹敵するクオリティーを出してくるとは思っていなかった。
その凄まじさを理解している高位貴族は『ヤバいのが来る!?』と、早めに理解して何時も以上に気合いを入れた。
そして『なんか凄いことだけはわかる』低位貴族や平民の生徒達は、高位貴族の生徒が緊張し始めたのを感じとり、ひっそりと自分の気配が出来るだけ薄くなるように願った。
そんなヤバい会場を作り出した本人は、何時もの格好で客人を案内し、中庭にやってきた。
「「「「っ!?」」」」
シリウスが連れてきた人物を見た瞬間、貴族の子息や令嬢は礼を行い、それを見た平民の生徒達も平民なりに礼をした。
((((なんてことをっ!!))))
「は、母上!?何故ここに!?」
「『サイレント』『パラライズ』…うむ。クリスもまぁおとなしく聞きなさい。皆のもの良い、此度はただの社交上手な淑女として来ている。マナー教諭と同じだと思いなさいな」
「さすが、素晴らしい魔力操作だ」
「オホホホッ、シリウスに褒められると活力が湧くわ。もっと褒めて良いのよ?」
「調子に乗るな。さて、製造教育者責任があるからという理由で協力することになったキャシー様だ……巷ではキャサリン王妃陛下と呼ばれている」
驚いてやって来た息子(王子)を強制的に黙らせ、シリウスとなんだか仲良さそうな国の女性の頂点である王妃陛下。
シリウスの言った通り、王子が学園の風紀を乱しているので協力を申し出てくれたのである。
そして、それは王妃だけではなく、王子の取り巻き達の母親達がぞろぞろとやって来たのであった。
(((((うわぁ……)))))
生徒達はシリウスのやりたい放題と、その人脈の強さにドン引きだ。
「彼女らは……まぁ私が12歳でこの学園に入学した時に共にマナーを学んだ淑女達だ。私が知る中でもトップクラスに出来る方々だな」
因みに、本来なら15歳からの入学であるのだが、シリウスは金で殴って入学を認めさせた。態度は最悪だが弟分として高位貴族令嬢達には可愛いがられていたのだ。
尚、シリウスは普段完全にスルーして、その権力が使える時は使うというスタンスだったのだが、それが逆にわかりやすいと好評だった。
シリウスの説明を聞いた生徒達は、そりゃあトップだろうよと、納得した。
というわけで、夢のお茶会とも言えるお茶会の始まりである。
「花につく虫の件、皆様お聞きになりまして?」
「えぇ。主人から聞いてどのように処理しようか悩んでいるところですの」
「まぁ、花をお切りにならないの?」
「いいえ、もう一つの花がまだ蕾も出来ぬ程に小さく、念のために蕾が咲くまで家に置いておくかという話ですの」
「ですが置いておくのも危険では?」
「そうなのです。そちらに同情的な庭師もいるのでどうしたものかと…」
「あぁ、おりますのよねぇ綺麗なものしか見ない方々」
――――見た目はとても優雅で和やかな茶会なのに、何故こんなに圧を感じるのだろうか。と、生徒達は遠い目をしながら聞いていた。
最初、生徒達は『花と虫?何処かの領地の問題かな?』と思っていたが、違ったのだ。察しの良い生徒達は『あ、王子達の話だ』と悟って表情が動かないように気合いを入れた。
尚、マリア嬢は『貴族の奥様も家庭菜園とかするのね』と思っているし、母親達にサイレントパラライズで黙らされた王子とその取り巻き達は『母上達の間で花を育てるのが流行ってるのか』と思っている。
しかも、彼らは最近サイレントなどをくらいすぎて慣れたのか『母上の誕生日に花に使える虫除け薬をプレゼントしよう』等と呑気に考えているので、王妃達の何かを逆撫ですること請け合いだ。
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