第27話 第二皇子がやって来た
帝国は、魔道具などの生産が盛んな技術大国であり、兵器の開発も行っている軍事国でもある。
王国も帝国に引けを取らないほど、魔道具の技術は高い(主にシリウス発)が、この二つの国には大きな違いがある。
王国は自然豊かな国であるのに対し、帝国は作物の育ちにくい土地なのだ。
魔の森と接している国という共通点もあるが、魔の森から出てくるモンスターの襲撃回数も帝国の方が多い。
シリウスが間引きをしているのは魔の森全域の話なので、どちらの国にモンスターが行きやすいかという問題なのである。
帝国は魔道具を売り食べ物を買い、いざとなったら他国に戦争を仕掛けるような国だ。
その帝国の海と魔の森を挟んだ反対側にある王国は、戦争を仕掛けるには位置が悪すぎるため帝国も外交で相手をするしかない国なのである。
しかし、実のところ『この自然豊かな国こそ帝国のものにするに相応しい』等と思っていたりもする。
今回留学してくる帝国第二皇子は、王国内に入り、自国と違い緑豊かな景色を楽しみながら学園へとやって来た。
王国の農業技術を得て、自国を豊かにしたいという理由でやって来たが、実のところ本命はシリウス・ウォーカーの確保である。
第二皇子は『我が帝国の申し出を受けない筈がない』『侯爵の庶子程度、遇してやれば喜んで従うだろう』と自信満々だ。
因みに、帝国はこういう思考の持ち主が大多数なので何処の国でも嫌がられている。
しかし、帝国側に嫌がられているという認識はなく『帝国が偉大過ぎて遠慮するとは、良い心根だ』と思っている超自己中ポジティブ国なのである。
そんな国の第二皇子が学園にやって来たのだが、顔は良くても帝国の人だからなぁと、殆どの生徒達には遠巻きにされていた。
第二皇子が遠巻きにされている本当の理由に気がつく筈もなく。皇子だから近寄り難いのだろう王国の王子として相手をしなくては!と意気込んだ王子と取り巻き、そしてマリア嬢が第二皇子に近づいた。
第二皇子も外交問題にするわけにはいかないので『帝国よりは下ではあるが王国の王子だし広い心を持って相手をしてやろう』と、無事に仲間入りした。
乙女ゲームにおける隠し攻略キャラ参戦である。
因みに国力で言えばシリウスの存在を抜いても王国の方が上であることは知っていていただきたい。
そんな第二皇子と王子達を見ていたシリウスは、面倒なのに面倒なのが合流したなぁとげんなりしてしまったが、問題を起こせば即刻帝国に送り返してやるつもりである。
とある日の廊下にて――
「ところで、こちらにシリウス・ウォーカーが居ると聞いたのだが?」
「……教授が何か?」
「会わせて欲しいのだが」
「……わかりました。研究室に案内しましょう」
――というやり取りを、シリウスは普通に近くで見ていた。
すぐそこにシリウスが居るにも関わらず、研究室のほうに移動しようとする王子達に、シリウスが居ることに気がついていた生徒達は慌てた。
「教授!声をかけなくて良いんですか?」
「行ってしまいますわよ!」
「何故気がつかないのか理解出来ん」
「それはそうですけども!」
「理解しようとするだけ無駄ですわっ!」
「私は背が高いし目立つと思っていたのだが、実は存在感が無いのか?」
「バリバリありますわよ!」
「彼らの目が節穴なだけです!それより研究室にいないとなったら彼らが騒ぎませんか!?」
「それもそうだな……まぁ君達が騒いでくれたおかげで彼らも私に気がついたようだ」
「「ひぇっ!?」」
幸い、彼等は都合の良い言葉しか聞こえない耳をしているようなのでシリウスに声をかけた生徒達が何を言っていたかは聞こえてないようだ。
普通の表情で近づいてくる王子達に、生徒達は逃げるようにシリウスから離れていった。
(退避判断が早いのは良いことだな。俺も逃げたい)
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