第15話 Side 王宮
書類仕事をしていたら、いきなり目の前に紙が現れて驚き、サインをミスって書き直しになったのは、いったい誰に文句を言えば良いものか……送り主に心当たりのある王は現れた書類内容を読んでため息を溢しそうになり、それを呑み込んだ。
「………すまぬが、あぁ宰相にも来たか」
「はい陛下。急ぎ問題児達とその親を集めます」
宰相が動き、とりあえず王は書き損じた書類を書き直すことにし、送られてきた書類内容を思い返して、愚息に理不尽な言い掛かりをつけられた令嬢達の家にも謝罪の手紙を送らねばなぁ……と、頭が痛むのを感じ、目頭を揉み込んだ。
あやつ、これ程馬鹿であっただろうか?と自分の息子のことを思い浮かべるも、思い出せるのは教育係からの報告書に記載されていた『優秀』の文字のみ。
忙しさを言い訳に息子とコミュニケーションを取っていないことに己の不甲斐なさを感じてしまった。
それにしたってこれは無いだろうと、書類に書かれている息子の言動(証拠映像や音声を提出出来ると追記あり)に親ながらドン引きしてしまっても仕方がないのではなかろうか?
報告者がシリウス・ウォーカーという点で、報告書の真実味が増しているが、どうか嘘であってくれと願いたくなる程に酷い。
王族以前に人としてちょっと無いな、と感じてしまったが、その当人は息子である。『どんな教育をしたんだ』や『親の顔が見てみたい』が自分に返ってくるとは思ってなかった王であった。
そして、それは宰相他聖女の取り巻きと言われている子息達の親も同じ気持ちであることは間違いなかった。
『まさか家の子が!?』というセリフを自分が言う羽目になろうとは、情けないやら腹立たしいやら……
一先ず話を聞いて、第一王子の側近から外すことは確定だが、よくわからんこと言い出したら徹底的にケチョンケチョンになるまで諭し、それでもダメなら他に兄弟も居るし、もしくは養子という案もあるし廃嫡しよう、というのが全員の共通認識となった。
高位貴族としての厳しさを知る当主達が、理解出来ないならば息子達は貴族社会で生きてはいけないと思い、早めに決断した方が彼等のためだと考えた優しさでもある。
それを彼等の息子達が理解出来るかはまた別の話ではあるが、シリウス・ウォーカーのおかげで犯罪も少なく平和だから廃嫡されても、仕事を選ばなければ生きていける国であるというのも事実。
シリウス・ウォーカーが教師になってから、身分問わず優秀な人材が増えていて、多少の問題が起こっても埋め合わせ出来る状態であるがゆえに、貴族の廃嫡騒ぎが起こっても国の基盤が揺るがず、余裕があるのである。
国が乱れなければ多少世間知らずが平民になってもまぁ身ぐるみ剥がされることはないだろうという判断だった。
というよりシリウスは錬金術科なのにあらゆる分野で優秀な人材が育っているのは何故?と思っていたら、教師の方を教育していたというオチであった。
まぁ、余裕があるからといって子供達を甘やかすのは違う。時々、自分が偉く将来は安泰だからそんなに頑張らなくても良い等と勘違いして学園にやってくる子もいるが、学園に入学した後は認識を矯正されるので大丈夫。
今回は、矯正以前に貴族や王族の権限について知識が無いと言われたも同然であるため、親達が責任を持って対処する事態となったのだ。
「しかし、クリスは問題行動もなく、婚約者との仲は良好という報告だったのだがなぁ……」
「私もですよ。護衛からの報告でも問題無しだと報告があったのですが…」
王と宰相、その二人に報告が行くまでに揉み消された可能性を疑うのは仕方がない。シリウス・ウォーカーという型破りが直接連絡という手段を使ったことにより初めて王子と聖女候補が親密になっているという事実を知らされたのだ。
「公爵家からの抗議も来ておらぬのは…」
「うちもです。リストにある子息の婚約者の令嬢と当主の話も聞かねばなりませんね」
思ったよりもただ事ではないことが起こっていそうな予感に、王と宰相はため息をつくのであった。
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