ノー勉バトル

星水

1st game

「ノー勉バトルしようぜ!」


 定期テスト初日の朝の教室で、高らかに放たれたその言葉にクラスメイトの視線は集中した。

 言を発したのは何かと目立つ、声がでかいだけの男、霧島航きりしまわたるだ。


「テスト勉強してこなかったヤツ、はい挙手〜!」


 霧島の言葉に大半のクラスメイトは迷惑そうに顔をしかめる。

 しかしお調子者の男子数名が意気揚々と手を挙げた。


「俺課題のワークやってなーい」

「教科書とか全部学校に置きっぱだわ」

「テスト勉強? ナニソレオイシイノ?」


 ケラケラと笑う男子たちは各々に「テスト勉強してない自慢」を繰り出す。

 それを見た霧島はニヤリと口角を上げて満足気に彼らを見下した。


「ハンッ! たったそれだけで俺に敵うとでも?」


 自信満々にそう言い放った霧島は、三名の男子生徒を連れて教室の隅へ移動した。


「移動する意味無くね?」

「なー」

「おいおい、普通にテスト勉強してる奴らの邪魔していいと思ってるのかよ。ノーベニストとしての矜持は無いのか?」

「ハハッ、ノーベニストってなんだよ!」


 霧島の妙な発言に三人は小馬鹿にしたように笑った。

 しかし霧島はそんなことは気にも留めず、教室後方にある自分のロッカーに手を掛けた。


「お前はワークやってないんだったな。見せてみろよ」

「おう、いいぜ! ほらよ」


 差し出されたのは水色の表紙の数学のワークだ。

 霧島はそれをパラパラと捲り、鼻で笑った。


「これで勉強してないだ? 問題を解いてるページがあるじゃないか」

「そりゃあ授業中にやれって言われたらやるだろ」

「甘いな」


 そう言って霧島はロッカーの中に規則的に積み上げられた本の束から数学のワークを引っ張り出す。


「俺のは名前すら書いてない。もちろん中身も真っ白だ。今すぐ売りに出せる」

「なっ!」

「フッ……俺の勝ちだな」


 ワークをやっていないと豪語していた男子生徒は、胸を押さえて呻きながら倒れ込んだ。

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