物語は多種多様な種族が息づく世界で、妖や魔法も存在する。けれどこの話の魅力はファンタジーな世界観ではなく、登場人物たちが織りなす繊細な人間模様にあると思います。
美しい容姿に慈悲深さ、その上で大国の姫という誰もが羨むような肩書を持つ人間の姫と、半ば予期せず彼女の護衛となることになった鬼人族の女性。
麗しく優しく他人を惹きつける姫に女性は尊敬を抱いていきますが、時折ふと姫が見せる憂いに気付き始めます。
色んなものに恵まれながら、それでも影を纏う姫の背景を女性が知るにつれ物語も動き出し、やがてそれは王国自体に関わるものへと繋がっていきます。
読んでいる途中ではキャッチコピーの「手を繋いで日の下を歩く」ビジョンがなかなか見えてこないでしょう。決して優しいだけでなく、時に厳しく辛い決断を迫られる物語でもあります。
それでも開けない夜はないと感じさせてくれる温かい陽だまりの物語です。
何が黎明なのか、誰にとっての黎明なのか、ぜひ読んで確かめて欲しい作品です。