7. ニヤけ面の変態野郎
やる気のある馬鹿が看守長に挑んでいって、10秒も経たずに負けて。
近くにいただけのやる気のねぇ馬鹿も指名されて挑んでいって、こっちは5秒くらいで負けて。
おもちゃみてぇに細い剣で、余裕そうな顔のままで、次々に馬鹿共を打ち負かしていく姿はそういう遊びみたいな感じで。
何人目かのヤツは看守長に弄ばれて、息を切らしながら膝をついてた。よく見たら駄犬のどっちかだった。
俺は距離も離れてたし、面倒くせぇし、ただ見てるだけのつもりだった。
あいつと目が合うまでは。
何人もの男共を相手にしたくせに、まるで疲れてないような余裕の笑みであいつは俺を見た。
意味ありげに、俺を見て。
そのせいで忘れてた最悪な記憶が蘇って。
あのクソムカつく度変態野郎を泣かしてやらなければならないと、決意して。
立ち上がって、銀を無視しながらステージに向かって歩いた。
周りの奴らが俺を見ていた気がするが、もうどうでも良かった。
「看守長様、僕もお願いしても良いでしょうか?」
言いつつ、舞台に上がる。
変態野郎は俺の剣をチラリと見たが、にやけ面のまま「あぁ」と剣を構えた。
大股で4歩の位置で俺も剣を構える。
正面ではなく、後ろに引いた体勢で。
兄貴の構え方じゃなく、俺の一番やりやすい体制で。
重心を落として、剣と体の重さが近くなるようにして、グリップを握る力は最小限で。
「来い」
あいつをぶっ殺す。それだけ考えて、それ以外を頭から消して、あいつを見て。
あいつの右足が少し後ろに下がった瞬間に飛び出した。
兄貴は強い。
俺も、その次くらいには強くて、だからこの奴隷収容所の中でもそこそこ強い方なんだ。
兄貴のように振る舞う間は全力が出せないが、周りを気にせずに本気を出せばあの余裕ぶっこいてる変態野郎にも傷くらいつけられるだろうと、思ってた。
だってあいつ、男のくせに体細ぇし、肌の色も白いからずっと引き籠ってじめじめした仕事ばっかりやってるんだろうし、ジューナンとかクールダウンとかそういう頭でっかちな事ばっか言ってて訓練時間減らすし。
だからちょっと剣が使えるくらいの見掛け倒し野郎だと、思ってたんだ。
俺の剣を、体を逸らすだけで避けやがったあいつは、その後の追撃も1歩下がるだけで避けて。
ムカついて距離を詰めた。んで、至近距離で叩き込んでやろうと思った剣に、力が乗る前にあいつの剣が添えられて、そのまま力を流されて。
息がかかるくらい近くで、やっぱりニヤけ面をしながら、あいつは剣を俺の首筋に突きつけた。
「剣は持ち替えろと言っただろう?」
蹴りを入れてやりたかった。
他の奴らの目がなければ、兄貴のフリがいらなければ、タマを蹴り上げてやったのに。
なのに俺は兄貴だから。
だから大人しく引き下がるしか無かった。
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