第27話 異世界魔王、配下たちと連絡先を交換する



「それで、お前たちの目的は俺の出迎えか」


「はい!」


 と勢いよくうなずいたのは千歳。


「う、うん。そうだよ」


 と歯切れ悪くうなずいたのは澄香。


「どうした? なにか別の目的でもあるのか?」


「そ、そういうことじゃないんだけど……」


「ほらお兄ちゃん。澄香さんはあれだよ、たぶん千歳さんに対抗してるんだよ」


「ほう?」


「千歳さんが昨日朝来たことを知ったから、それに対抗して今朝は来ちゃった。そうでしょ!」


「……う、うう。愛華ちゃん勘が良すぎるよ」



 恥ずかしそうに、澄香は愛華の言葉を肯定した。


 どうやら愛華の言葉は当たっていたらしい。


 さすがだ。

 魔王の妹なだけはある。

 

「ふっ。千歳に対抗心を燃やすとはな。恥じることはないぞ、澄香。先に配下となった千歳に対抗するのも当然だ。むしろ、配下としての自覚が芽生えているのだから、俺としては喜ばしいことだ」



「え? はい……? あ、あー。そうか。魔王君はそうだよね」


「あー、お兄ちゃん、そっちだと思ってるのかー。これは……まあお兄ちゃんが楽しそうならそれでいいか」



 感心して褒めたはずなのに、なぜか澄香からは微妙な反応をされた。

 愛華もどうしてか少しあきれているようだ。


 なぜだ。

 いみがわからん。



「あ、そ、そうだ。私が来た理由はもう一つあるんだよ、うん。魔王君のことが心配だったの」


「心配? なぜお前が俺のことを心配する?」


「ほら、昨日の電話の件だよ。あれ、あのあと大丈夫だった?」


「俺のバイトのことか」



 そういえば、あのとき俺の電話の声が千歳と澄香にも聞かれていたんだったな。



「あの程度の些事、何の問題もありはしない。バイト先にいって店長と話したら、これまでの金をポンと支払ったよ」


「そうなんだ。よかったぁ」


 俺の答えに澄香は安堵し、笑顔になった。



「なになに? なんのはなし?」


 俺たちの会話が気になった愛華がきいてくる。


「バイトのことだ。金のことで少し揉めていたのでな。そのことで澄香から少し知恵を借りたのだ」


「えー! そうなんですか! 澄香さん、ありがとうございます!」


「そんな、私はぜんぜん……」


 澄香の手を握って感謝し始める愛華。

 そんな愛華の様子に苦笑しつつ、澄香は謙遜していた。


「支払われていなかった金は、昨日店長からしっかりと回収した。知恵を貸した澄香にも褒美を与えよう」


「私はなんにもしていないよ。ぜんぶ、魔王君が自分でやったことだから。褒美なんて」


「魔王の褒美だ。配下ならば受け取っておけ」


「あ、それなら。褒美として澄香さんもうちでご飯を食べるっていうのはどうですか? 朝ごはん、一緒に食べましょうよ」


「悪くはない」


 愛華の提案に、俺はうなずいた。


 今回の褒美としては、いい案である。

 さすがは魔王の妹だ。


「いいのかな……。それなら、もらっちゃおうかな」


 澄香も乗り気のようだった。

 


「じゃあここにいるみんなでご飯を食べましょう!」


 と、愛華は笑顔でつげる。


「ま、魔王様! 私はなにもしておりません。これが澄香ちゃんに対する褒美というならば、私はご一緒するわけには」


 しかし、千歳はそれに遠慮していた。

 

 確かに、千歳は特になにも手柄を立てていない。

 それに負い目を感じているのだろう。


「細かいことを気にするな。お前は俺の一番の配下だ。ならば、俺と朝食を共にする権利はある」


「そうですよ、千歳さん。みんなで一緒に食べた方が美味しいですよ!」


「えーと、千歳ちゃん。そんな恐縮されると私の方も困るっていうか。私も大したことしてないから……」



「そ、そうですか。では、せめて朝食のお手伝いを!」


「私も手伝う!」


「じゃあみんなでご飯を作りましょうか!」


 女たち3人はわいわいと騒ぎながら、朝食を作るためにキッチンへと向かった。




 そして、朝食を食べた後。


 千歳は積極的に皿洗いをし始め、それに対抗して澄香も皿洗いを行っていた。

 それが終わった後、俺は二人に話しかける。



「そういえば、俺はスマホを買った。店長から回収した金でな」



「魔王様、おめでとうございます!」


「ついにスマホを買ったんだね、おめでとう!」



「それで、昨日ラインというアプリを入れたのだ。お前たちも魔王の配下なのだから、連絡のために連絡先を交換しろ」


「お兄ちゃん、そういう命令口調じゃ女の子は――」



「わかりました」

「りょうかーい」


 千歳と澄香は己のスマホを取り出す。



「女の子は、なんだって?」


「なんでもない。そうだよね、お兄ちゃんは魔王さんだからね。こうなるよね。普通の常識じゃ測れないよね」


「よくわからんが、魔王たる俺が常識では測れない存在だというのは認めよう。よくわかっているな、さすがは魔王の妹だ」


「わーい、褒められたー」


 愛華はわーいと喜ぶが、なぜか棒読み口調だった。

 魔王に褒められ、緊張しているのだろうか。

 かわいい奴め。



 スマホを取り出した俺と愛華は澄香と千歳と連絡先を交換する。


「4人でグループ作りませんか」


 という愛華の提案に、全員でうなずいた。


「私がグループ作っちゃうね。名前はどうする?」


「なんでもいい。好きに決めろ」


「うーん。じゃあ魔王軍、というのはどうかな?」


「いいね、魔王軍」


 澄香の提案に、千歳は全力でうなずいていた。


「俺は問題ないぞ」


「……もしかして、私もお兄ちゃんの魔王仲間に入れられちゃってる?」


「何を当たり前のことを。お前はそもそも魔王の妹ではないか。配下でこそないが、お前も魔王軍の一員だ」


「……ああ、私もその扱いなのか」


 愛華は、何かを諦めたようにため息をついた。



「どうする? 愛華ちゃんがいやなら、別のにするけど」


「いいですよ、嫌じゃありません。魔王軍でもオッケーです!」



 愛華はグッと親指をたてる。


「オッケー!」


 澄香もそれにグッと親指を立てて返した。



「じゃあ、4人で魔王軍の完成だね!」



 澄香の言葉に、パチパチと千歳が勢いよく拍手を送り、それに合わせて愛華も不承不承といったように拍手を送っていた。


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