過酷な中世ヨーロッパの世界観を背景に、歴史の闇に消えた「白死病」というオリジナルの疫病を絡めた設定が非常に引き込まれる作品です。命ではなく「記憶(魂)」を奪うという病の恐ろしさが、人々の疑心暗鬼や魔女への迫害という時代背景と見事にマッチしており、物語に深い緊張感を生み出しています。
何より素晴らしいのは、主人公のメルクスと魔女リーボイスの温かい絆です。凄惨な過去のトラウマから自身の存在意義に悩んでいたリーボイスが、メルクスの真っ直ぐな優しさに触れて前を向き、再び魔法を「人を救うため」に使う決意をする姿には胸を打たれました。
絶望的な状況下でも互いを信じ抜く二人の姿や、愛する人の眠っていた記憶を呼び起こすクライマックスの展開は非常に感動的です。悲しい過去を乗り越え、最後に雪の中で想いを伝え合うシーンは美しく、読後にとても温かい余韻を残してくれる素晴らしいファンタジー作品でした。