第2話 電車に乗って月読峠へ

 東京から新幹線に乗って、しばらく西に進む。

 最寄りの新幹線の駅でおりて、そこからは急行に乗り換えて、月読峠の町の駅まで2時間かかった。この町の駅はこじんまりとしていて、いかにも田舎の駅という感じだけど、やはりあのニュースを見て集まったような人を多く見かけた。

 眼を遠くにやると白く雪をかぶった険しい山並みが遠くに見えた。

 三方を高い山並みに囲まれた狭い町並みだった。


 東京駅を出てから三時間半。近いとも遠いとも言える距離だ。

 日帰りだと厳しいけど、明日学校休むわけにも行かないから、帰りは午後七時の新幹線に間に合うように帰らないといけない。

 駅の北口から出ると、くるりと駅前ロータリーがあり、タクシー乗り場には一台だけタクシーが止まっていた。

 ロータリーの片隅に、銅像が立っている。でも変な銅像だった。カラスみたいな羽を背負っている、真っ黒い銅像。


 父からもらったゴツい腕時計を見ると、午前10時を少し回ったところだった。

 しかし、と考えてみる。勢い余ってここまで来てみたが、彼女の住所もわからないのだ。どうしたものか。

 見上げると冬空は暗い雲に覆われている。少し寒くなってきたし、雪でも降りそうだ。ダウンジャケットのチャックを首元まで引き上げる。


 こんな小さな町にはいくつも高校があるようには思えないから、とりあえず高校に行ってみるか。今日は日曜日だけどクラブ活動くらいやってるだろう。

 それでもって、ニュースに出ていた子の事教えてといえば、なんとかなるだろう。


 もともと楽観的な僕は、お茶でも買おうと駅の商店街の端にあるコンビニに寄ることにした。

 歩き出した途端、ザザッと音を立てて冷たい雨粒が僕の髪を濡らしだした。

 駅の構内からはだいぶ離れてしまっていたし、コンビニの手前にあったバス停の屋根の下に僕は避難する。通り雨のようだしすぐに止むだろう。

 小降りになったらコンビニでビニール傘でも買えばいいや。


 偶然の雨に飛び込んだバス停、そこで僕は見つけてしまったのだ。

 今回の騒動の源を。

 バス停の端に二台並んだ自動販売機、その狭い隙間に古びた巻物が落ちているのが見えた。

 もしかしてこれって、ニュースにあった古地図なのかな。


 屈んでそれを拾い上げる。

 フェイク古地図も多いと聞いたが、見た感じといい持った感触といい、長い年月を感じさせられた。


 紐をほどいて広げてみると、かび臭さが鼻についた。

 それはテレビで見た古地図の画像とはまったく違っていた。

 テレビで見たいくつかの画像では、上空から見た地形を描写してあり、その一部分に目印とかが書かれてあったのだけど。

 僕の拾ったこれは、地図というよりは風景画だったのだ。


 湖を描いた水墨画だ。

 なんだ地図じゃないじゃんと落胆しかけたが、その絵の中に落書きみたいに線が引かれ、湖の中の小さな陸地に生えた松の木の上空に、変な目印があったのだ。


 その目印は三つの枝が重なっているように見える。どういう意味だろう。

 直線の横に注釈もあった。”20m”と書いてある。

 この絵の松の木の上空20メートルという意味だろうか。

 そこに三本枝のマークが?

 

 つまりどういうことだ? そこになにかが有るか無いかは、見上げれば一目瞭然なのに。探すまでもないじゃないか。


 そうだ、古地図を扱う古書店の話もネットにあったな。そこに持っていってみよう。

 そうしているうちに雨も上がったようで、雲の隙間から微かにだけど日差しも見えてきた。


 まるで、僕にこれを見つけさせるために降った雨みたいだ。

 古書店の場所はわかっているし、高校を探すよりも先にそこへ行くことにした。

 

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