路上ライブを続ける青年・橘海斗の孤独と、音楽を通じた自己肯定を描く物語である。観客ゼロの状況下で、一人の女性が彼の「聲」を認める瞬間の心理描写が丁寧だ。かつて味わったステージの熱狂と、現実の駅前の静寂を対比させることで、海斗の抱く焦燥感と、出会いによって灯った微かな希望が鮮明に際立っている。音楽をテーマにした物語を好む者や、夢と現実の狭間で葛藤する読者におすすめできる。