まっすぐに生きようとする人ほど、愛に足をすくわれてしまう――
そんな残酷な真実を静かに照らし出す物語です。
道ならぬ愛という背徳的なテーマを扱いながら、登場人物たちの想いはあまりにも切実で、哀しいまでに美しいのです。
とりわけ心が苦しいのは、それぞれの配偶者がとても善良であるという事実です。そんな夫を、妻を、裏切るつもりなどなかったはずなのに、愛は時に人を狂わせてしまうのです。
情熱と倫理の狭間で揺れる彼らの選択は、ひたすら愚かで痛ましい。
愛と罪、欲望と結果。その情念の深さを、アダルトな官能の熱を帯びながら淡い光で包み込むような静謐な筆致で謳い上げた緋雪氏の意欲作
『忘れることなどできないだろう』
このタイトルに込められた想いの結晶が、読後もずっと疼きを孕んで脈打ちます。
大人の恋愛を描いた物語が好きな方には、是非、読んでいただきたい一作です。