このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(83文字)
孤独を抱える少女・リディア。彼女を取り巻く空気感、静かな森の匂い、そして無機質な静寂描写が美しい。感情を直接的に語るのではなく、事物や景色の対比によってキャラクターの孤独や諦めを浮き彫りにする情緒ある表現が好きです。
不壊の聖女リディア。けれど本作で最も胸を打つのは、その力ではなく、錫杖、肘掛け、お茶、彼女の周囲で「壊れ、変わっていくもの」でした。感情の名前を知らず、泣くことさえできないリディアに代わって、物の変化が愛着や喪失を静かに伝えます。神殿によって聖女の形を与えられ、守る盾から裁く道具へ変えられながらも、彼女は触れられた手の温度や、かけられた言葉を少しずつ蓄えていく。変わらない身体の内側で、人間らしさが確かに育っている。その歩みが優しく、同時に残酷で、美しい物語でした。
人間社会から見捨てられ、森の静寂に同化した少女の孤独と、それを「発見」する側の騎士・聖女の温度差が際立つ、非常に完成度の高い幕開けです。リディアの「感情の麻痺」が、彼女の肌の硬質さとリンクしているようで、その痛ましさが胸を打ちます。