物語は、人の頭の上にゲームのようなゲージが見えてしまう主人公・望君が、完璧なゲージを持つ女の子・琴葉と出会うところから始まります。
しかし彼女には奇妙な特徴がありました。
それは、「ありがとう」と言われたときだけ、ゲージが極端な反応を示すこと。
望君はそんな彼女に興味を抱きますが、ゲージのことは自分にしか見えません。当然、そのことを気軽に話せるはずもなく――。
心のバッテリーゲージが見える主人公。そして「ありがとう」で壊れてしまう女の子。のっけから強烈なフックを持った物語です。
一方で、その先に描かれるのは、多感で不器用な二人の、心温まる交流でした。
ゲージが見えるからこその、例外が現れたときの衝撃、そして後ろめたさや戸惑い、そういった望君ならではの感情が描かれており、とても引き込まれます。
そしてそんな望君の目線だからこそ、読んでいて琴葉のことを知りたいという思いが増幅されます。彼女のクールかつ鉄壁の心のカーテンが外れた光景には、一種の爽快感が味わえます。
そして何より私が好きだったのは、望君の恋愛感情への向き合い方です。
自分の気持ちを言葉にしようとしながらも、結局はできず、名前も付けず、評価もしない。そんな望君が作り出す余韻や空気を、心の中でニヤニヤしながら眺める時間が、とても楽しい作品です。
多感(ゲージ)な主人公が紡ぐ、少し不思議で優しい物語。オススメです!
消耗具合のゲージが見える、という突拍子もない設定からスタートする、強い誘引力のある冒頭。
しかし、この物語の真の価値は奇抜なギミックではなく、一貫した「心の揺れ」の描き方にあります。
ゲージというわかりやすい指標は、あくまで物語の補助に過ぎず、二人の繊細なやり取り、若者特有のうまく言えない気まずい空気。そうした、懐かしさに胸がキュッとなる感覚を引き起こす、作者の筆致に目を奪われます。
「ありがとう」は、救いにも呪いにもなる、強い言葉。その二面性を、強いギミックとすり合わせながら、美しい物語に閉じ込めた手腕は見事です。
読み終えた今、ただ一言だけ伝えたい。
この物語を生み出してくれて、「ありがとう」と。