タイトルにある「煙」という言葉が幾層もの意味を持ち、迫ってくる。
夫との絆をあらわす煙。
虚無感を紛らわせる煙。
そして、最後まで彼女のそばにいた煙――
本来なら「米寿」を祝われるはずの年齢だった。
それなのに、主人公が置かれたのはあまりに静かで残酷な境遇だった。
彼女は決して「上流階級」ではない。
けれど、運命を呪う代わりに煙草に火をつけて深く吸う、その姿には気高さが宿っている。
主人公が同居しているのは、息子、その嫁、孫息子。
問題だらけの家族。ペンキで描いたような笑顔。うなぎと寿司。
そんなリアリティが、物語の没入感をより高める。
淡々と語られるモノローグに、気づけば絡めとられていました。
煙が目に染みて痛いような、肺の奥まで痛いような読後感でした。