第九話(第一部のラスト・レビュー時点最新)まで拝読させていただいた時点でのレビューです。
国内ラリーを舞台にした、非常に読みやすくテンポの良いモータースポーツエンターテインメント作品です。
ストーリー構成は、強大なワークスチームに挑む大学の弱小サークルという、王道の熱血(スポ根)ドラマのフォーマットを踏襲しています。
主人公がクラッシュや挫折を経験しながらも、コ・ドライバーとの絆や先輩からの荒療治(笑)を経て、ドライバーとして覚醒していく過程は、まるで少年漫画やスポーツアニメを見ているかのような心地よいカタルシスと勢いがあります。
お嬢様コ・ドライバーの麗華と、感覚派ドライバーの陽葵。
対照的な二人が、挫折を味わい、泥を啜りながらも同じゴールを目指して覚醒していく展開は、読者の胸を熱くさせる圧倒的な「勢い」と「エンタメ性」を持っています。
モータースポーツの専門知識がなくても、彼女たちの感情の動きに引き込まれると思います。
そして、本作の最大の魅力は、なんといっても「ラリーイベント特有の空気感」の描写にあります。
競技車両と一般の観客との距離の近さ、サービスパークでの泥臭いメカニックたちの熱気、そしてセレモニアルスタートでランプ(お立ち台)に登る際のあの独特の高揚感。
サーキットレースとは一味違う、地域と密着したラリーならではの熱量と雰囲気が、テキストからしっかりと伝わってきます。
実際のラリー現場の空気や匂いを知っているからこそ描ける「リアルな情熱」が随所に散りばめられています。
マシンの挙動といったメカニカルな要素以上に、限界状況下での「人間ドラマ」にしっかりとフォーカスが当てられているため、非常にテンポ良く読み進めることができます。
過酷なモータースポーツの世界を、明るく熱いキャラクターたちの掛け合いを通して気軽に覗いてみたいという方や、純粋な青春バディものが好きな方にぜひおすすめしたい作品です。
タイトルからして、クルマを題材としつつも、あくまでキャッキャウフフな雰囲気を忘れないお嬢様物語化と思いきゃ、一転、いざ本番となれば手加減抜きの自動車競技作品となります。
作者様は現在もコ・ドライバーとしてラリー競技の現場に身を置いておられるということがあり、クルマ走行シーンの描写は迫力満点。
それでいてラリーに関わりのない読者を置き去りにしないのは、なにより、おそらく作者さまの「こんなドライバーでありたい!/いてほしい!」という「理想」を体現した主人公・陽葵の存在が大きいでしょう。
あとは私の経験も踏まえて要望を挙げさせてもらえるとすれば、ずっとラリー・シーンの描写でテンション上がりっぱなしですと、おそらく読者様が疲れますので、合間合間に「お嬢様らしい日常のコメディ」をはさんで、物語に緩急をつけることでしょうか。