容姿に優れるという一点において、
賞味期限付きの「アイドル」として消費されてきた少女。
彼女が選んだのは、自らを月人(うさぎ)へと『戻す』こと。
本作の白眉は、その徹底した「解剖学的正確さ」にある。
人とうさぎの解剖学的な対比を描き、一つ一つ、取り返しのつかない処置を重ねる――。
それは彼女の人生の解剖学でもある。
時に『解剖学的正確さ』とは性器や陰部まで正確に描くことを隠喩するものだが、まさにその機能を以て彼女の『生への飽き』を浮かび上がらせる。
彼女にとっては「本当の姿」を取り戻す救済の儀式だが、
『常識的』な世界に住む私たちには、緩やかな自殺にしか見えない。
それがどんな結末を生むのか、最終話の最後の一行まで、絶対に読んで欲しい。
それなりに売れっ子アイドルだった主人公、ゲッカ。彼女は実はずっと一つの想いを抱えていた。
『この美少女の肉体はかりそめの姿なの、私ほんとはウサギなの、きっといつか月に帰るわ。』
そんなことを思い、ウサギになることを夢見る彼女。
ファンタジーならほんわかしたストーリーが生まれそうな設定ですが、これはSF。
夢の実現のため彼女がしたのは、闇医者に頼って、強度の整形手術を受けること。
当たり前ですが、ヒトとウサギの解剖学的構造は相当異なります。
でも、それを無理やり実現するとしたら何が起こるか……。
SF ですが、かなりホラー寄りの一作。
個人的に、ホラーの公募なら上位に食い込んでも不思議はない名作だと感じました。
ご一読を。