ほしわた氏の全作品の中で、最もポップで最も「うるさい」一作だ。
凱亜の脳内実況が止まらない。ガリア遠征、ワーテルロー、兵站、キンキナトゥス——歴史上の人名と戦略論を「カレーの鍋」と「裏庭の穴」に直結させる独白のリズムが快調で、読んでいて声を出して笑える。「ぬくぬく堂」のももかの脳内実況が野球ならば、凱亜のそれは世界史だ。
「勝利条件は討伐ではない——無傷で日常へ帰還し続けること」という設定の立て方がこの作品の核心で、主人公が強くなることよりも平穏を守ることに価値を置くという逆転が、ダンジョンものというジャンルに新鮮な角度を与えている。「50分タイマー運用」「食事規程」「生活侵食度」という独自のゲームルールが、凱亜の規律美学と完璧に一致している。
目次タイトルが「スパイシーな強奪戦〈カレー・ウォー〉」「聖徳太子の限界」「補給王ハンニバルとおやつバフの奇跡」と並ぶ——これだけで雰囲気は伝わるはずだ。完結済み28話、ほしわた氏の作品群の中で最も「一気読みしたくなる」ジャンルエンタメだ。