第3話 検証資料:〇〇警察署 現場臨場記録および防犯カメラ映像解析

【資料概要】

本資料は、藤代氏からの通報を受けて現場に急行した警察官の報告書、およびアパート「コーポ・ササユリ」に設置された防犯カメラの解析結果を抜粋したものである。


〇〇警察署 地域課 巡査による報告書(4月13日 23:45)

通報者(藤代氏)は極度のパニック状態にあり、「壁から名前を呼ばれている」「スマホが勝手にメールを送っている」と訴えた。


現場を確認したところ、以下の不審点が認められた。


壁の損壊: 通報者が主張する「壁紙の下の刻印」を確認。確かに「たすけて」という文字が無数に彫られていたが、筆跡は複数人のものに見える。


郵便物の異常: 玄関に山積みにされた郵便物の中に、「濡れた生温かい封筒」を数通確認。雨は降っておらず、水濡れの原因は不明。


通報者のスマートフォン: 端末を確認したところ、通報履歴は一切残っておらず、代わりに「佐藤幸男」という連絡先から1秒間に10件以上の着信が現在進行形で続いていた。


【解析資料】アパート設置・防犯カメラ映像(4月13日 深夜2時〜4時)

02:14:

アパートの入り口に、郵便局員と思わしき制服を着た男が現れる。男は異常に背が高く、関節が不自然な方向に曲がっているように見える。


02:30:

男は302号室(藤代氏の部屋)のポストの前で停止。鞄から「何か」を取り出すが、それは手紙ではなく、人の指ほどの太さがある「肉の塊」のように見える。それをポストの隙間に無理やり押し込み始める。


02:45:

男がカメラを仰ぎ見る。男の顔には目も鼻もなく、顔全体が巨大な「切手」のような四角い紋章で覆われている。


03:00:

映像に激しいノイズ。ノイズの合間に、カメラを覗き込む男の背後に、全裸で全身に文字を書かれた男(佐藤幸男と推定)が、四つん這いで這い上がってくる姿が記録されている。


郵便局からの公式回答(照会結果)

「当該日時に、コーポ・ササユリへの配達予定はありません。また、映像に映っている制服は1970年代に使用されていた旧式のものであり、現在このタイプの制服を使用している職員は存在しません。

なお、消印にある『〇〇分室』は、40年前に土砂崩れで全壊し、当時の局員全員が生き埋めになった場所です」


202X年4月14日(日) 藤代の日記(殴り書き)

警察は「悪質ないたずら」だと言って帰っていった。

壁の文字も、彼らには見えなかったらしい。

「ただの古い傷だ」って。


でも、警察が帰ったあと、ポストを覗いたら、さっきの警察官の**「警察手帳」**が入ってた。

中を開けたら、警察官の顔写真のところが切り抜かれて、代わりに私の顔写真が貼ってあった。


そして、その手帳の備考欄に、新しいメッセージが。


「不在だったので、持ち帰りました。 ――佐藤より」


玄関の鍵が、内側から勝手に回る音がする。

ガチャン。

ガチャン。

ガチャン。


開けてない。私は開けてない。

でも、扉が、ゆっくりと、「内側から」開いていく。


【調査報告:補足】

この日を境に、藤代氏の住民票は「死亡」ではなく「宛先不明」という特異なステータスに変更された。行政システム上、このような変更が行われることは通常あり得ない。

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