物語の始まりは、現代アメリカから。
リオとクララという大学生男女二人が、歴史民俗博物館での特別展に出席する流れが描かれる。リオの曽祖父の遺品とされる『鍔』の寄与者としての出席だ。そこには国務省の次官補も初日の式典に出席しており、それが思わぬ事態——リオとクララの異世界転移を引き起こすことになる。
二人が飛ばされたのは、これまでの常識とは異なる精霊と術理が息づく世界だ。彼らが一歩踏み出すにつれ、徐々に見えてくる世界の輪郭。訪れる新たな出逢いと別れ。これは、帰還を望みながらもそこで生きていくために地に足をつけて自己を研鑽していく彼らの物語である。
リオとクララは異世界転移によりチート体質になったものの、彼らでも相応の努力を必要とする世界だ。地道な努力を惜しまない人間である彼らの真摯な眼差しは、この世界で何を見つけるのか。伸ばした手で、果たして何を掴むのか。
エルフや様々な種族が混ざり合って生きている世界の構築が細やかで、言語の問題、異なるジェスチャーの問題などリアリティに富んでいる。発動の思考が異なる魔法と霊唱術の違いなどが丁寧に描かれるため、見知らぬ世界を興味深く見つめたい読者に特にお薦めしたい。