聖騎士


 マーシャルもマーシャルで大変そうだな。そう思いながらもさらに一週間後。


 俺は今日も森の中に入っては、職務を全うしていた。


 シャール達はいつも通り敵を運んでくれるお陰で、戦闘には特に困らない。それに、この森は敵からしても重要な部分なのか、これだけ味方が消えているにも関わらず偵察を送ってきてくれるお陰で敵に困るような事はないのだ。


 敵様々である。


 ちなみに、現在の戦争は微不利ぐらいで、ジリジリと戦線が下がっている。このまま余裕が無くなれば俺も投入してくれそうで正直もう少し負けてくれないかなと思っていたりした。


 もちろん、エルフに死んで欲しい訳じゃない。


 常に睨まれてはいるものの、別にエルフの死を願う程のものじゃない。この国で参戦したのだ。勝って欲しいとは流石に思う物である。


 そんな事を考えながらも、しばらくの間森の中を彷徨い続ける。


 シャール達は少し離れた場所で俺を監視するのはいつもの流れ。そして今日は敵が中々見つからなかった。


 視線も感じないから、索敵ができない。


 20mに魔力探知を広げたりもしたが、何一つ引っかからなかった。


 おかしいな。いつもなら接敵していてもおかしくない場所まで来ているんだが。


「敵が見えねぇな」

『そうね。こういう時は引いた方がいいのだけれど、そんな事は考えてないでしょう?』

「よく分かっているね。全く引く気はない」

『はぁ、本当にどこで間違えたのかしら?』


 強いて言うなら最初からじゃないかな。


 そんな事を思いながらも、更に敵陣側へと進む。


 すると、ゾワリと背中を刺す感覚があった。


 俺は反射的にその場に隠れ、異様な気配が感じる方向に目を向ける。


 すると、そこには真っ白な甲冑に身を包んだ兵士たちがいる。


 国の紋章を刻んだ甲冑に、様々な武器。そして何よりもこの場にいても感じる神聖力。


 聖騎士だ。この国の切り札とも言える存在が、何故ここに........?


『少数精鋭で裏から奇襲を仕掛けるつもりらしいわね。だから人が減らなかったのね。これを見せないために』

「強いな」

『聖騎士でしょう?3000年前の話だけど、当時の聖騎士はクソみたいに強かったわよ。ほんと、手を焼かされたわ』


 まるで戦ったことがあるような口ぶりだが、魔塔に“喧嘩しようぜ!!”と言う軽いノリで喧嘩をふっかけているヤベー奴である。


 お、お前強そうやん!!魔術とどっちが強いか勝負しようぜ!!のノリで仕掛けていてもおかしくなかった。


 俺は悲しいよ。こんな狂戦士みたいな師匠を持って。


 しかもこの人、体が元に戻ったら魔塔に仕掛ける気満々ですよ。


 俺も着いて行くつもりではあるが、大義なんてものはそこにはないのだ。


 まだ自分なりの正義を掲げてくれた方がマシである。


 それについて行こうと思っている俺も大概な気がするが。


「どうする?」

『あら、どうするもこうするも、やるしか無いわよ?だって─────』


 次の瞬間、俺が隠れていた木に矢が突き刺さる。


 できる限り気配は消していたつもりだが、ガッツリバレていたようだ。既に気が付かれている以上は、やるしかない。


『───バレているもの』

「まぁ、どちらにせよ仕掛ける気だったからいいけど。それと、流石にシャール達には報告に行かせた方がいいよなこれ」

『そうね。聖騎士が動いたとなれば、甚大な被害が出る可能性があるわ。流石に報告に行かせた方がいいわね』

「となると、俺はあの全員を止めながら戦わないと行けない訳か」


 どうせこの感じだとシャールたちもバレている。


 俺は素早くシャールの元に行くと、要件だけ伝えた。


「おい。聖騎士だ。さっさと下がって報告してこい」

「人間、お前はどうするつもりだ?」


 流石に状況が状況なだけあってか、冷静に言葉を交わすシャール。こういう所で私怨を出さないのは評価できる。


 多分、俺が人間じゃなくてエルフだったら友人になれるぐらいには、良い奴なんだろうな。


 自分の戦果にしているのも、亡くした戦友たちの墓を立てるためって聞いたし。


 同族にはとことん優しいタイプだ。


「足止めしてやる。見捨ててもいいぞ」

「馬鹿言え。どちらにせよ、俺達も戻ってこなきゃならん。お前に死なれると面倒だと指揮官に言われていてな。俺も残────」

「帰れ。俺の獲物を奪うな」


 俺も残るとかいう戯言が聞こえたので、さっさと帰るように言う。また俺から獲物を奪うのか?あの聖騎士の前にお前に仕掛けるぞコノヤロー。


 あれだけ強い奴らを渡して溜まるか。命を削った殺し合いができるんだから、大人しく寄越せ。


「チッ、死にたがりの思考は理解出来ん。おい、さっさと下がるぞ。人間、死ぬのは勝手だが、俺達に迷惑をかけるなよ」

「はっ、死んだ後のことなんか考えてねぇよ。大事なのは今だろうが」


 3週間の付き合いで、俺の性格を理解していたのかシャールはあっさりと引き下がり、仲間を連れて撤退を開始。


 遠距離攻撃手段を持つ聖騎士が攻撃を仕掛けてきていたが、俺が全部弾いておいた。


 さてと、これで存分に楽しめる。


「........人間がなぜエルフの味方をする?」


 聖騎士達は追いかけるかと思われたが、以外にも冷静でシャール達を追いかけずに俺を始末する気らしい。


 エルフが何人来たところで簡単に勝てると言う、慢心の表れが若干見て取れた。


 その余裕、すぐに無くしてやるよ。


「聞き飽きるほど聞いた質問だな。成り行きだ」

「成り行きでこうもなるものか。貴様、女神様に対してあまりにも不敬がすぎる。天罰を下してやろう」

「なんだ、神様にでもなったつもりか?お前らの思想は好きにすればいいが、俺に押し付けてくるなよ。好きな子に意地悪したいお年頃なのか?鏡見ろよ。キツイぞ」

『ぷはっ!!あはははは!!』


 煽りがツボに入ったらしい。イザベルが吹き出して、お腹を抑えて笑い始める。


 そんなに面白かったか?見ろよ、あのおっさん。顔が真っ赤だぞ。


 大好きな女神様を愚弄されたからか、殺気まで纏っちゃって。そんなんだから独身なんじゃね?偏見だけど。


『あーやっぱり私の弟子は、詐欺師にでもなるべきね。お口が上手だわ』

「褒めてんのかそれは」

『褒めてる褒めてる。口喧嘩だけは私よりも強いかもしれないわねー。あの土人形の魔女もイラッとしてたし』

「確かに」


 学園長もちょっとイラついていたし、口は上手いのかもしれない。


 まぁそれはそれもして、今は目の前の聖騎士5人をどう捌くかだな。


 とりあえず後を追いかけられないようにはしたが、こいつら揃いも揃って強い。


 全員あのオーラエキスパートよりも上の実力を感じる。


 穴がない。下手に仕掛けると、簡単にこちらが死ねる。


「貴様は殺したあと、女神に背いた愚か者として磔にしてやろう」

「女神は少年を殺して磔にするのが趣味なのか。悪い趣味してんな。神を名乗っていればそれすら許されるのは羨ましいが。どうせお前みたいなオッサンじゃなくて顔のいいお兄さん達を囲って贅沢三昧の神だろ?脈ナシだぞ。諦めろ。見苦しいって」

「貴様ぁぁぁぁ!!」


 聖騎士全員ぶちギレ。


 狂信者を怒らせるのは簡単で何よりである。


 さてと、これで俺を本気で殺しに来てくれるようになった訳だが、とうやって戦おうか?


 普通に勝てなさそうな相手なんだよな。死ぬ気で価値をもぎ取りの行かなければ、先に死ぬのは俺である。


『やばそうなら言うわよ』

「分かってる」


 俺はそういうと、ゆっくりと構えを取るのであった。


 聖騎士相手にも勝てれば、最前線に投げ込んで貰えるかな?頑張るとしよう。

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