第6話

転勤前、最後に会った日。


「向こうでも変わらないよ」


彼は言う。


何が?


朝のメール?


それとも、曖昧なままの距離?


「変わらないって、なにが?」


思わず聞いてしまう。


彼は少しだけ笑う。


「俺たち」


その言葉が、いちばん曖昧だ。


俺たちって、何?


好きでもなく、

恋人でもなく、

家族でもなく、


俺たち。


電車が来る。


「三年なんてすぐだよ」


またそれを言う。


すぐ、なわけがない。


三年あれば、

人は、ちゃんと選び直せる。


選び直されることも、ある。


ドアが閉まる直前、

彼は言う。


「いなくなるわけじゃない」


じゃあ、何なの。


声には出さない。


ホームに残ったまま、

わたしは初めて思う。


言われない「好き」ほど、

残酷なものはない。

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