王国の首席計数官だった父が「勇者」と「神殿」の不正を告発しようとするも、逆に濡れ衣を着せられ殺されたのを目の当たりにしたエマ・ルミナス。成長して父の復讐に燃えるエマだが、彼女が復讐に選んだ手段は暴力に頼ったものではなく、隠蔽された数多くの不正を、書類や帳簿に残された数字を使って明らかにする、法と数字に基づいた精算だった!
ファンタジー世界を舞台にしているが、主人公のエマがギルドの査定員であることもあり、扱う事件が横領や保険金詐欺などの経済犯罪なのが大きな特徴。最初は地方の商人や冒険者を相手にしていたのが、話が進むにつれて、不正を暴く対象が銀行や神殿、さらには王国全体へとスケールアップしていくのもよい。
数字に対する直感は優れているが、フィジカルはヨワヨワなエマと、彼女に買い取られた護衛のヴォルフによる丁々発止のやり取りも面白く、バディものとしてもしっかり楽しめる。
物語の設定上、経済用語なども頻繁に飛び交うのだが、各話の終わりにエマによるわかりやすい解説もあるため、経済関係にあまり馴染みがない人でも理解しやすく読むことができる。題材は変わり種だが、幅広い読者に勧めることができる経済ファンタジーだ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)
私は結構テレビドラマを見る方なのですが、本作は、今クールに放送された、おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-×プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮に、さらに魔法の要素が組み合わさった欲張りな作品であると思いました。
魔法がある世界なのに、やってることが「税務調査」とか「保険金の査定」っていうギャップがとにかく斬新です。
派手な呪文でドカンと倒すんじゃなくて、現場に残った魔力の跡を分析して自作自演を見抜いて追い詰める展開が痛快でした。
『1ゴールドの誤差も見逃しません』主人公のそのプロとしての矜持に痺れます。
章末の用語解説も、ナレーションによる解説ではなく、主人公の語り口となっていることから、読者が主人公に説明を受けているような形になっており、主人公が如何に膨大な知識を持った優秀な査定員であるかを読者に印象付けるのにも一役買っているようで、上手いやり方だなと思いました。