中からノックの音がする箱、見るたびに被写体が動く写真、知らないうちに数が増えていく食器……生活の中に突然現れるこのような異様な品々を、深夜限定で回収に向かうのが、本作の主人公・空木六郎だ。
しかし、特殊な仕事に就いてはいるものの、彼には何か特別な能力や知識があるわけではない。ただ、上司に言われるがままマニュアルに従って仕事をしているだけの普通の人間だ。だから彼は、上司からきつく『箱を開くな』『気にするな』と言われているにもかかわらず、怪現象を起こす回収品の正体が気になり、つい惹かれてしまう……。
この奇妙な品々の描き方が実に絶妙で、恐ろしいけれどもっと詳しく知りたいという欲求が、つい読者側にも湧いてくる。回収後に回収品の正体や曰くが詳しく解説されることはないのだが、それがまた独特の余韻を残すのだ。
異変が起きた瞬間にタイミングよく無線で忠告をしてくる上司や、回収した物品をにこやかに受け取り淡々と処理する管理人など、同僚たちもどこか底知れないものがあり、薄気味悪さに拍車をかけている。さらに、様々な物品回収を通して、六郎に欠けているものが徐々に明らかになっていくというストーリーの縦軸があるのもよい。派手さはないものの、その分、真綿で首を絞めるようなじわりとした怖さがある逸品だ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)