湘南の海と緑の電車。穏やかな風景の中に取り返しのつかない喪失の痛みが滲む。何気ない日常の幸福と、タイミングのズレがもたらす運命の分岐。この分岐は人生に何度も訪れるが、たいていは、その分岐点にすら気づかず終わってしまう。ただ時々、大きな分岐は起こる。赤い木の実、車窓の視線といった分岐のモチーフがあまりにも不安で不安定な空気感を物語全体に漂わせる。ポケットの赤い木の実。最後の分岐かもしれないそれに気づかない、気付けない、その部分が非常に何とも言えない読後感を残す物語。