第28話 文化祭のポスター
秋が近づき、学校は文化祭の準備でにぎわっていた。
教室の後ろにはポスターや作業用の段ボールが積み上がり、
休み時間もみんな慌ただしく動いている。
ひよりは机の端でスケッチブックをめくりながら、
ちょっとだけ迷っていた。
(絵を描くのは好きだけど……
人前で出すのはちょっと怖い)
そのとき、しおりが声をかけてきた。
「ひよりちゃん、ポスター描けるんでしょ?
クラス展示の看板にイラストお願いしたいんだ」
「え……わ、私が?」
「うん。絵、得意なの知ってるもん」
ひよりはドキリとしたが、
しおりのまっすぐな目を見て、小さくうなずいた。
「……やってみる」
放課後、美術室の隅の机。
ひよりは筆を持ち、下絵を描き始めた。
しおりは隣でペットボトルのお茶を飲みながら、
じっとその様子を見ていた。
「ひよりちゃん、集中してるときの顔、いいね。
中学のとき図書室で本読んでる顔と似てる」
「え、変な顔じゃない?」
「ぜんぜん。むしろかっこいい」
ひよりは思わず赤くなり、
筆先が少し震えた。
作業の合間に、しおりが窓の外を見ながらつぶやく。
「こういうの、一人でやるより楽しいね。
ひよりちゃんがいると、なんか落ち着く」
ひよりは筆を止めて、そっと答えた。
「……私も。
一人だときっと描けなかった」
ふたりは顔を見合わせて笑った。
帰り道。
夕暮れに染まった通学路を並んで歩きながら、
ひよりは少し勇気を出して言った。
「しおり、誘ってくれてありがとう。
やってみたら……ちょっと楽しかった」
しおりが笑顔でうなずく。
「誘ってよかった。
文化祭、楽しみになってきたね」
夜、机のメモ帳にひよりは書き込む。
〈ポスターを描いた。
しおりと一緒だと、不思議とできる気がした〉
ペンを置いたひよりは、
窓の外の秋の月を見上げてふっと笑った。
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