第9話 キミの居場所
急遽天依が家に泊まりことなり、今はとりあえず彼女と共に自分の部屋に移動した。
「さてと、何かやりたいこととかあるか?」
「そう言われてもよく分からないわね」
天依は俺の部屋をきょろきょろと見ながら困った風な顔をした。
「一応、娯楽系は一通り揃ってるぞ。ゲーム機に漫画、MPadにもMeTubeとか映画も観れる」
「……映画」
ぽつり、と天依がそれに興味を示したように呟いた。
「うし、じゃあ映画観るか」
「……ゲーム」
「ゲームにするか?」
「漫画も」
どうやら気になるものが多くて迷っているようだ。
頭をぐるぐるさせている天依。その姿が可愛くてつい微笑を浮かべてしまいながら、俺はふと気になったことを天依に訊ねてみた。
「そういや前に天依の部屋に行った時娯楽が少なく見えたんだけど、ひょっとして家じゃそういうの厳しいのか?」
「……」
天依は少し答えたくなそうに顔を顰めながらも、
「そういう訳ではないわ。ただ、そういったものを必要とは思わなかったから通らなかっただけ」
「でも、今は興味あるんだろ?」
と言うと天依は何故か俺をジト目で睨んできて。
「興味は湧いたのは遊波くんの影響よ」
「俺?」
困惑する俺に、天依はこくり、と頷いて、
「この部屋に定期的に通うようになってから、否応なしに遊波くんの私物が目に入るんだもん」
「はは。なるほど」
つまり、それまでは近くで見なかった物が、俺の部屋に通い始めたのをきっかけに目に入れる頻度が増えた結果、好奇心を刺激され続けて興味が湧いてしまったというわけだ。
「それならそうともっと早く言ってくれれば、いつでも貸したり見せたりしたのに」
「この部屋に来る目的がセックスするためだったから進言しなかったのよ」
「そういや、この部屋に着いた瞬間、我慢の限界って感じで即服脱ぐもんな」
「ここはヤリ部屋としか認識していなかったわ」
「人の部屋を勝手にヤリ部屋呼ばわりするな!」
俺は天依に呆れつつ、
「それじゃあ、今日はヤリ部屋じゃなく、気楽に過ごす部屋として使うぞ」
「え? セックスはしないの?」
「今日はしない!」
「……そう」
なんでちょっと物寂しそうなんだ。まぁ、その心情を察せなくもないが。
天依は普段から色々なものを抑圧しているのだろう。それがストレスと蓄積され、その発散として性的な快楽を求める。
それも確かにストレス発散の一つだ。けれど、天依はそれしか知らないのだろう。他にどうやってストレスを発散させたらいいのか分からないのだ。
あの娯楽もない、ただ勉強と最低限の生活だけをするような殺伐とした彼女の部屋を見れば、彼女が苦悩と限界の果てに性的なストレス発散を求めるようになったかは想像に容易かった。
その方法はきっと、天依にとって救いのだろう。けれど、それはいつか天依自身を破滅させてしまうような気がした。
だからこそ、今日はどんなに天依に求められても応じるつもりはない。
その代わり、
「うし、そんじゃあひとまず映画観るか。天依が気になるの観よう」
「いいの?」
「もち。今日は天依が気になるものをとことんやろう」
「——」
俺の提案に天依はほんの少し戸惑いと申し訳なさそうな顔をした。そして、何かを飲み込むように顔を俯かせる。
数秒後、俯いた顔が上がった時、天依が見せてくれたのは柔らかな微笑みで、
「ありがとう。遊波くん」
「——どういたしまして」
ほんの一雫、天依の目尻に浮かんだ涙が、悲しみからではなく嬉しさから来ているものであってほしい、俺はそう切に願うのだった。
——あとがき——
自分で書いててこう言うのもあれだけど、『ひめとけ』おもろw w w
あ、急ですが本作の略称は『ひめとけ』になりました。他にも候補として『あまとけ』がありましたが、作品名の前半ガン無視だったのでやめました。読者さん的にはどっちがいいかコメントしてくれると助かるっす。
27日に追記。
金曜日と土日で話書き切る。そして休む! マジで生命が終わりかけているお_:(´ཀ`」 ∠):
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