森鴎外『舞姫』を題材にしながら、“文学そのものが隠蔽したもの”をミステリとして暴いていくのがめちゃくちゃ面白かったです。
単なる文学オマージュではなく、「削除された文章」「改稿」「実在のエリーゼ」という史実・文学研究を、本格ミステリのギミックとして組み込んでいるのがかなり巧い。
掲示板に浮かぶ血文字、消えていく張り紙、改稿順と一致する配置など、“謎”としてちゃんと成立しているのが良かったです。
特に、中里先輩のキャラが強烈。
幻想文学の住人みたいな危うさと、名探偵としての鋭さが同居していて、会話だけでも読ませる力がある。
一方で青木芥の「温度を読む異能」が、単なる能力バトルではなく、“過去と現在のズレ”を感覚的に表現する装置になっているのも上手いです。
終盤の「Elise」の署名に至る流れはかなり綺麗でした。
“エリスは二度殺されない”という決着も、この作品のテーマをきちんと回収していて好きです。
文学、怪異、都市伝説、本格ミステリ、幻想性。
それらをかなり高いレベルで混ぜ合わせた、“文学ミステリ”として非常に印象的な作品でした。
この二人の出会いや他の事件簿も読みたいです!