主人公の名前が滝廉太
登場人物がジミ・ヘンドリクソン、エリック・クラプトニウス
…この手の作品で露骨にオマージュみたいな事するとスベり散らかして終わるんだよなぁ等と失礼なことを思いながら読み始めるも、序盤から圧倒的に違う空気感。
なんといってもマリアンヌ。
呑んだくれでストゼロ中毒の彼女が物語の推進力として申し分ない。
僭越ながらファンソングも贈らせていただきましたが、彼女から見たfalls instrumentsをもっと見てみたいという願いを込めて曲を制作致しました。
洋楽を時系列で把握している方には是非読んでほしい一作。
https://suno.com/s/iYFKV4zzs22Fn0yK
音楽というものは良いものだ。日本全国は勿論のこと、アメリカや中国、オーストラリアやエジプトにも音楽を愛する者はいる。言語や文化はいくらでも違うが、音楽だけは世界の共通認識だと信じたい。
そして、それは異世界でも同じ事だ。父が借金と共に残した音楽店にあった時空の扉から、異世界へ行けるようになった主人公の廉太。荒み切っていた心を、異世界で出会った仲間と音楽達で癒していき、もう一度立ち上がっていくさまが素晴らしいと思う。何やら訳ありなインテリ酒カスちゃん、夢を追い掛ける若いミュージシャン達、そして、音楽を愛する多くの人々。世界は違えど、音楽を通してぶつかり、分かり合い、前へと進んでいく。
二つの世界にかける音楽の橋。果たして、夢はどこまで広がっていくのだろう?
音楽とは秩序であると信じていたエリート指揮者が、すべてを失ったどん底から異世界の「ノイズ」に救われていく姿に深く感情移入してしまいます。
現実世界の借金取りや消防署、異世界の警察という両面から詰められるハードな状況下で、主人公が店主として、そして新しい音楽のリーダーとして覚醒していく展開が熱すぎます。何より、彼の店に転がり込んでくる元吟遊詩人のマリアンヌとの関係性が素晴らしいです。最初はただのストゼロ中毒の厄介者だった彼女が、主人公の孤独を少しずつ溶かしていく過程の描写がとても丁寧で、深夜の工房でのやり取りなどは読んでいてニヤニヤが止まりませんでした。
父親がなぜこの店を遺したのか、そして店名に込められた真意に気づくシーンの伏線回収は見事の一言。エリートのプライドを脱ぎ捨てて、泥臭く音を鳴らす主人公の生き様そのものが、一つの美しい狂詩曲のような作品です。
「音楽は秩序」という信念を持つ主人公が、父の死と借金によって“ノイズ”の世界へ放り込まれる導入が非常に鮮烈でした。
シャッターの向こうに広がる紫の霧の異世界と、2026年モデルの最新機材という対比が、現代技術と魔法の融合という独自性を際立たせています。
ストロンガーゼロが“神の酒”になる場面や、Kemperが魔力で駆動する描写には、発想の大胆さとユーモアがあり強く惹きつけられました。
楽器の専門的な説明が物語の説得力を支えつつ、父の遺言や店名の多義性がテーマに深みを与えています。
秩序から混沌へ踏み出す主人公の転換が鮮やかで、ここからどんな“音”が鳴るのか期待が高まる作品です。