第17話
準備運動は終わりだァ……出し惜しみはナシでいくぞ?
………轟々と燃え盛る激情が、フッと静かに引いていく。
久々の感覚だ。本気で集中するのは、このゲームでは初めてか。
楽しむのではなく、勝つために。
今の俺は、ただでさえ速いAGI180に【身体強化】【金剛身】【疾駆】【咆哮】などの直接的なバフに加え、【戦神の寵愛】【立体機動】などの間接的なバフすらもかかっている状態だ。
────そんな状態で、全力で移動したら……?
「【空歩】」
恐らく周りのモンスターの目には、消えたように映っただろう。
いや、残像くらいは見えているか? 確かめようがないから分からないがな。
ゾウモドキの一体の後方に一瞬で移動し、攻撃用の武技を使わず殴打。
流石に攻撃されれば気づく。ゾウモドキは後ろ足で踏み潰そうと足を上げ、
「シィ───ッ」
股下をすり抜け、後ろ足をあげた方の前足の関節を砕く。
───同時、俺を狙って放たれたウォータービームがそのゾウモドキに直撃する。
バランスを崩し追い討ちを食らったゾウモドキは、土埃を上げながら横に倒れる。
追撃は行わず、倒れ落ちてくるゾウモドキを回避する。
直後、今更ながらに動き始める他のゾウモドキたち。逃げようにも周囲はすでに包囲されていた。
まだバフは切れていない。
────【魔力感知】発動
地面を蹴り、ビームを撃とうとしていた正面のゾウモドキの眼前へ躍り出る。
ソイツはすでに長い鼻をコチラに向けており───
「フッ───」
空中で身体を回転させ、遠心力を乗せた蹴撃。
未だ移動する前の場所を見つめている、隣のゾウモドキへと、魔法が発動する直前の長い鼻を向けさせる。
結果的に味方を誤射したゾウモドキ、接近してくるその顔面を蹴り飛ばし足場にすると、弾丸の如き勢いで他のゾウモドキの方へ向かう。
再び俺を見失うモンスターたち。
ロケットのような勢いで、俺は一匹のゾウモドキへ空中突撃し、衝突する直前。
俺の思考とは対称的に、メラメラと燃え盛るガントレットを突き出し、速度のまま攻撃する。
武技を使わない、ただただ速く重い一撃。
それは直撃したゾウモドキの顔面を陥没させ、仰け反らせる。
────【危険察知】【魔力感知】発動。
残っている【空歩】の二歩目を使い、すぐさま離脱。
周囲を確認するために宙返りしながら後方へ飛んだ俺は、先程の位置に極太のウォータービームが通過したのをこの目で確認する。
仲間のゾウモドキを巻き込んでの攻撃を行ったのは、群れのボスと思われる一回りおおきなゾウモドキであった。
「チィッ」
判断の早さに思わず舌打ちする。これで、仲間を盾にする戦法の意味が無くなった。
なぜなら構わず攻撃されるのだから。
「【空歩】」
目ざとく周りの様子もしっかり確認していた俺は、【空歩】を発動し地面へ急落下、衝撃を殺し着地する。
───直後、3方向から放たれた水のビームが真上で激突する。
「──【疾駆】」
切れかけたバフをかけ直し、再び圧倒的な速度で移動する。
すれ違いざまに殴り、蹴り、【空歩】で躱し、【金剛身】をかけ直しつつ突撃、殴打。
移動と同時に攻撃し、【空歩】で躱し、また移動する。
時には攻撃を誘っての同士討ち、時には攻撃をあえて受け止めてのカウンター。
一撃でもマトモに喰らえば即死の綱渡り。
そんなことを幾度か繰り返せば、10数匹はいたゾウモドキの数も少しは減る。
何より、【猛攻】によってかつてないほど攻撃の威力が上昇している。
一通りのバフがかかっているとは言え、ただの一撃が、武技を含めた最大火力に匹敵しかねない威力となっている。
「【空歩】」
累計七度目の空歩の発動。向こうも学習したのか、逃げ道を塞ぐように放たれる複数のウォータービーム。
だが、その程度で俺を止めることは叶わない。
連続で宙を蹴ることで包囲網を抜け、攻撃を回避する。
「【空歩】」
そろそろMPが少なくなってきた。決着を急ぐとしよう。
包囲網を抜けた先で待ち構えていた突進攻撃を、空中で方向転換し回避。その際すれ違いざまに攻撃を加えるのを忘れない。
勢いのまま大地を駆ける。
狙うは───大将首。
移動する度に、轟々と燃えるガントレットの残火が尾を引いてくっきりと軌道を残す。
しかし、その発生源たる俺の姿を捉えることはまだ出来ていない。
だが、段々と移動先を読まれるようになってきた。
なので、今回は意表をついて眼前ではなく側面に移動する。
そして、案の定。
ゾウモドキの群れのボスは、そこに移動すると考えて長い鼻で目の前を薙ぎ払った。だがしかし、それは空を切るだけに終わる。
側面から飛び上がり、その胴体へ拳撃を打ち込んだ。
───同時に追撃として蹴り飛ばし、その勢いで移動する。
【猛攻】によってとてつもない威力となった攻撃で、群れのボスは悲鳴を上げる。
そのおかげか、他のゾウモドキに動揺が走った。
当然そんな隙を見逃すことはなく、次々と攻撃を仕掛け、離脱を繰り返す。
すでに限界だったのか、あるいは攻撃の威力によるものか、続々と倒れ伏し光となっていくゾウモドキ。
……そうして、気づけばあっという間に残り一匹。
フラつきながらも立ち上がったのは、ボスとしての意地か、あるいはただの生存本能か。
「シィ──ッ」
俺はそれを見届けることもなく、ただ淡々と攻撃を行い、そして───
『レベルが上がりました!』
『【発勁】武技を習得しました!』
『【金剛破砕】武技を習得しました!』
『【魔纏脚】武技を習得しました!』
『【裂空衝】武技を習得しました!』
『【飛撃】武技を習得しました!』
『【連撃の道 Ⅴ】称号を獲得しました!』
『【連撃の道 Ⅳ】は【連撃の道 Ⅴ】に統合されます』
『【連撃の極致】称号を獲得しました!』
『【連撃の道 Ⅴ】は【連撃の極致】に統合されます』
『【桜花瞬塵】EXスキルを獲得しました!』
『【無双】称号を獲得しました!』
『【空中機動】スキルを獲得しました!』
『【空歩】【空中機動】【立体機動】【浮遊】を統合して【天駆】スキルを獲得しました!』
『特定条件を満たしました』
『【気配察知】【危険察知】【生命感知】【見切り】を統合して【心眼】スキルを獲得しました!』
【発勁】
【格闘術】の7つ目の武技。発動すると、防御を貫通する掌底を放つ。
【金剛破砕】
【格闘術】の8つ目の武技。発動すると、超高威力の正拳突きを前方に放つ。また、直線上に高威力の衝撃波を同時に放つ。
【魔纏脚】
【魔闘術】の2つ目の武技。発動すると、一定時間脚による攻撃の威力が上昇する。この間、脚による攻撃に魔力攻撃属性が追加される。
【裂空衝】
【魔闘術】の3つ目の武技。発動すると、一定時間自身の肉体を使った全ての近接攻撃に、中程度の追加斬撃ダメージが加わる。
【飛撃】
【魔闘術】の4つ目の武技。発動すると、拳によって衝撃波を放つ。
【連撃の道 Ⅴ】
絶えることのない攻撃を目指す者の証。すでに道は踏破した。しかし極致に達するには、何かが足りない。
:27回以上の連続攻撃によって敵を倒す。
:【猛攻】による威力上昇の上限をなくす。
【連撃の極致】
連撃の極致に達した者の証。真の連撃とは、必ずしも攻撃である必要はない。一方的な連続行動こそが本質なのだと気づけば、扉は開かれた。
:一度の戦闘で被弾することなく、30回以上の連続攻撃を行い、回避と攻撃を合わせて50回以上連続で行う。
:EXスキル【桜花瞬塵】を獲得する。
【桜花瞬塵】
発動すると、思考速度とあらゆる行動速度が600倍になり、解除と同時に攻撃を加える。この間、あらゆる武技は発動できず、【猛攻】の効果はリセットされない。この間に与えた全てのダメージは、発動中は保留され、効果終了後に遅れて反映される。効果時間は、通常速度で0.1秒間。発動後、24時間のクールタイム。
【無双】
並ぶものなしとされた者の証。たとえ力が足りずとも、最後は誰よりも上に立つだろう。
:10体以上の自身よりレベルの高いモンスターを、被弾することなく単身で全滅させる。
:一部のNPCからの好感度が上昇する。
【空中機動】
空中での行動に補正がかかる。
【天駆】
発動後、一定時間空を自由に駆けることができる。空中で停止することも可能。また、空を駆けないで落下することも可能。
【心眼】
自身の周囲のあらゆることを自動的に把握できる。発動すると、発動中敵の攻撃を予測できる。
…………やっとアナウンス終わった。
「っはぁ~~~~~疲れた」
いや、久々にここまで疲れたわ。
とりあえず、ステータス確認だ。
=========
名前 ラグ
種族 獣人(狼)
職業 魔闘士
レベル 43(5↑)
SP 50(50↑)
HP 50/50
MP 75/210
STR 100
VIT 10
AGI 180
DEX 100
INT 5
MND 5
<EXスキル>
【
<スキル>
【格闘術】【猛攻】【鍛治】【加工知識】【魔力操作】【特殊調合】【九死一生】【瞑想】【身体強化】【疾駆】【咆哮】【魔闘術】【冷血】【魔力感知】【金剛身】【跳躍】【天駆】【心眼】
<武技>
◇格闘術
【インパクト】【パワーフィスト】【シャドーステップ】【チャージインパクト】【震脚】【嵐脚】【発勁】【金剛破砕】
◇魔闘術
【魔闘拳】【魔纏脚】【裂空衝】【飛撃】
<称号>
【連撃の極致】【森狼の天敵】【最速ボス討伐者】【鍛冶師】【特殊調合師】【伝説の弟子】【耐える意志】【格上殺し】【戦闘狂】【戦神の寵愛】【無慈悲な執行者】【無双】
=========
結構なスキルが統合されたからか、色々スッキリしてるような気がする。
そして、MPは思っていたよりも消費していなかった。
色々気になるところはあるが、とりあえずレベル45まではレベル上げだ。
─────
───
『レベルが上がりました!』
あれから同じような戦闘を再び行えば、無事レベルは目標の45に到達した。
というわけで、もうここには用はないので撤退する。
サラバだ、クリファス高原。二度と来ることはないだろう。
─────
───
そうして俺がやってきたのは、ノーサーディアの訓練場だ。
何故か? 増えたスキルの確認の為だ。
特に今回は大きく変わったので、じっくり確かめていく必要がある。
なので今回は、有料オプションである〝ダメージ測定器〟ってのを使ってみる。
ダメージ測定器ってのは、文字通り与えたダメージを測る魔道具で、専用の場所で案山子に攻撃を加えると、勝手に測定してくれる。
ただ、案山子には防御力が完全に存在しないので、測定されたダメージがモンスター相手にそのまま出てくることはない。
実際に出せるダメージは、100分の1とかその辺りらしい。
そういうわけなので、あくまで比較検証用の魔道具として扱われる。
あと、測定したダメージなんだが…………記録される。
誰々の最高記録は何ダメージ、みたいな感じで全ての測定器に記録されるし、こっちからも見れる。
まあ、何もいじらなければ匿名で記録されるので問題は無い。
匿名にしたくない場合、自分の記録は普通に名前を変えられるので、表示したい名前に書き換えるだけでいい。
参考までに、現在載っている記録を。
歴代1位、〝とある騎士団長〟
記録されたダメージ〝2,665,403,711〟
歴代2位、〝匿名〟
記録されたダメージ〝2,494,389,420〟
歴代3位、〝炎獅子〟
記録されたダメージ〝1,707,448,135〟
彼らは一体何と戦っていたんでしょうか(震え)
化け物たちのことは置いておくとして、異邦人ことプレイヤーの記録はまた別で見ることができる。
異邦人1位〝白虎〟
記録されたダメージ〝648,598〟
異邦人2位〝ライン〟
記録されたダメージ〝495,301〟
異邦人3位〝匿名〟
記録されたダメージ〝277,468〟
プレイヤーの平均は2万ダメージくらい。なので、実際だと200ダメージくらい? まあ、最大火力とはいえ平均じゃそんなもんか。
…………俺には普通に致命傷だがな。
HPを初期値のままにしている俺も悪いのだが、それでも平均の一撃でHPが全損すると思うと、あまりの耐久に涙が出てくる。
まあいい、切り替えよう。
とりあえず今回はこのダメージ測定器を使って、スキルの検証をしていこうか。
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