第66話 母の遺言。秀吉が初めて呼んだ「おっとう」という名
大政所危篤の知らせを聞いて、秀吉は急ぎ、聚楽第に向かったのですが…
秀吉が聚楽第に着いたときには大政所はすでに息を引き取っていました。
「おっかぁ」
秀吉は遺体に取りすがり泣き始めました。
「お前さま…おっか様がお前さまにと手紙を…」
「おっかぁが…」
ひよしへ
わしはおまえに謝らねばならんことがある。おまえがわしの腹にいる時、弥右衛門に死なれてしもうて途方にくれておった。幼いともをかかえて、身重の身では働くこともできなんだ。だから、わしはお前を流そうとしたんじゃ。すまねぇ、すまねぇ、いくら困っていたからといってもやってはならんことじゃった。それを止めてくれたのが竹阿弥じゃった、竹阿弥がいたからおまえはこの世に生まれてこれたんじゃ。
お前が小さい頃高い熱が出たこともあった。貧しい家じゃ。医者も薬師も来てくれん。ようやく来てくれた薬師は高価な薬がいるという。その時も、竹阿弥が銭を用立ててくれたんじゃ。後で聞いたが竹阿弥は織田信秀様の茶道具を盗んだため、暇を出されたときいた。竹阿弥はおまえには絶対にいうなと言ったが、やはりおまえには知らせておくべきだとは思ってこの手紙を書いている。無学なわしじゃ。読みにくいと思うが、読んでくれ。そして、どうか、竹阿弥を、実の父親と思うて孝養を尽くしてくれ。お前を流そうとしたわしが言えた義理ではないが。わしの最後の願いじゃ。
なか
「おっかぁ…嘘じゃろ…こんなこと…」
「竹阿弥はどこへ行ったんじゃ」
秀次の子どもたの一人が言いました。
「じじ様は旅に出ると言うとった」
秀吉は聚楽第の出入口まで、走って行きました。ちょうど、竹阿弥は旅支度も終え、聚楽第を出るところでした。
「どこへ行くんじゃ」
「太閤殿下…わしに声をかけてくれるとは珍しいこともあるもんじゃのう」
「おっかぁの手紙を読んだ。これは本当のことなのか」
竹阿弥は手紙を受け取ると目を通しました。
「これは仲の戯れ言じゃ。仲は優しい女じゃったから、わしのためにこんな嘘を書いたんじゃろ」
その言葉を聞いた秀吉は大政所の手紙は真実だと思いました。
「なんでじゃ、なんで言わなんだ」
「なんでも何も、この手紙に書いてあるようなことはなかったからな」
「わしももう年じゃ。先は長くない。わしは仲たちの菩提を弔う旅に出ようと思う。好きにさせてくれ」
「お…おっとう」
「!!」
「初めてそう呼んでくれたな。ありがとうよ。天下の太閤様にそう呼んでもらってわしは果報者じゃ。じゃあな」
そのまま、竹阿弥は去って行きました。
「お前さま…」
おねが秀吉の肩に手を添えました。
「おね…みな…みな…わしの側からいなくなってしまう。秀長も旭もおっかぁも…そして…おっとうも…」
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