勇者という超常の異能者が、モンスターの大軍と戦い続ける世界。
勇者はそれぞれに『ユニークスキル』を持ち、それを使ってモンスターを倒し続ける──
──というところだけ抜き出すと、勇者を主人公にした無双ものに思えるかもしれない。
しかし本作の主人公は心療師。勇者たちの心を癒すため、前線に配属された一人の少女だ。
この物語の勇者は精神の均衡を崩すと強くなる。しかし均衡を崩した心で戦い続けると壊れる。だから心療師がその心を癒す必要がある。
ところが『魔法を使いました。心が治ります』というようなことはなく、PTSDを発症した勇者たちとかかわるうちに、心療師の心身もまた疲弊していく……
全体に重苦しく覆いかぶさる『この世界も、この世界で生きる人も、とっくに限界で、明るい未来などどこにもない』という雰囲気。
状況、心理の『限界』ぶりを如実に伝える淡々とした文章力。
全員が必死に生きているからこそ読んでいくうちに胸が詰まるような暗い閉塞感。
『そこで生きる人の心』から世界のダークさを読み取らせていくサイコ・ダークファンタジー。
是非一読して、この世界で生きる人々の心に触れてほしい。
(「10テーマ小説コンテスト」骨太ダークファンタジー部門 講評4選/文=稲荷竜)