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    文芸部へのご参加、ありがとうございます。
    「カナブン」という身近な存在を軸に、法廷劇の事後談のような、あるいは取り返しのつかない変質を目撃してしまったかのような、極めて重厚で緊迫感のある物語でした。

    ■ 全体を読んでの感想
    冒頭の「金蚊の生態は謎に包まれている」という学術的な一節から、最後の一行で「夏を待てないカナブン」が飛翔するまでの構成が実に見事です。
    妻を殺された被害者遺族である金森氏が、数年の時を経て「すらっとした体型」や「キチキチに絞られたシャツ」という、一見すれば「再生」とも取れる外見に変貌していながら、その実、内面は「ドロドロに溶けた液体から、カチカチに冷えた固体(成虫)」へと、ある種の狂気へと変態を遂げてしまった。その残酷な対比に、言葉を失いました。
    握りつぶされたアオハナムグリの乾いた音が、静かな事務所に響く場面の緊張感は、読後も耳の奥にこびりついて離れません。

    ■ お題「提喩(シネクドキ)」の活用と技法について
    本作では、登場人物の感情や事件の異常性を、あえて「直接語らない」ための装置として、提喩が極めて効果的に配置されていますね。

    「緑のネクタイ」と「キチキチのシャツ」【属性による換喩・提喩】
    金森氏の現状を語る際、彼の全身ではなく「緑のネクタイ」や「絞られたシャツ」といった一部の装いを強調することで、彼がもはや人間としての柔らかさを失い、甲虫のような「外骨格」を纏った存在に変質してしまったことを象徴させています。

    「ボールペンの先端」と「年月日の凹凸」【部位による提喩】
    金森氏がボールペンでノートの年月日をなぞる仕草。この「先端」という極めて小さな一部の動きを執拗に描くことで、彼が過去という一点にのみ全存在を賭けて固執している異常性が際立っています。

    「徽章(バッジ)」のメッキとカナブンの目【属性の転用】
    弁護士である「私」の胸元のバッジ。そのメッキが剥がれた鈍い色をカナブンの目と重ねる描写。権威の象徴であるはずのバッジ(一部)が、自然界の無機質な観察者の目と重なることで、正義や法の虚しさが提喩的に浮かび上がっているように感じました。

    ■ 最後に
    「カナブンはね、三角(小楯板)なんです」。
    このあまりにも微細な「一部」の差異が、殺意の証明や正当化に繋がってしまう。提喩という武器を使い、人間の論理が壊れていく様をこれほど鮮烈に描き出した力作をありがとうございました。
    また、あなたの鋭利な視点が切り取る「世界の断面」を、ぜひ部室に届けに来てください。お待ちしております。

    作者からの返信


     ありがとうございますっ!

     カナブンまみれではありますが、中々綺麗な短編かなと!