引退を目前に控えた路面電車、「緑爺」。もうすぐただの「鉄の塊」になる緑爺には、最後の願いがあった――風を切って走り抜けた現役の日々。年老いた緑爺と会話をするのは、効率を重んじる新型トラムの「ノヴァ」。交わらないはずの二つの視点が物語を深く切なく彩ります。三月三十一日、ついに訪れた緑爺のラストラン。読後、心に一枚の桜の花びらが舞い落ちるような読書体験を、ぜひあなたも。
昔のとあるアメリカ人の言葉に、「老兵は死なず。だた消え去るのみ」というものがあった。この話の「老兵」はその「彼」ではない。作中の老兵が見たものは何だったのか。様々なものが凝縮された優れた掌編。是非。