ファンタジーのようなタイトルからは想像できない、
冷徹なロジックで編み上げられた、あまりに上質なミステリー。
読み始めたら、良い意味で鮮やかに裏切られ、ページをめくる手が止まりませんでした。
「勇者は仲間を見捨てない」
かつて裏山を駆け回ったあの日、無邪気に掲げたその誓いは、いつしか残酷な沈黙へと姿を変えていた。
子供たちの罪と罰。島を覆う不気味な選挙の熱狂。一通の絵葉書が告げる終わりの始まり。
読み終えたあと、タイトルの持つ「封印」という言葉の本当の重さに言葉を失うはずです。これは、かつて勇者になりたかった主人公が、大人として過去と対峙するための、十年越しの「本当の冒険」の記録。
郷愁の中に潜む狂気が胸を突き刺す、ホワイダニットの極致とも言える完璧なサスペンス・ミステリーです。
東京のアパートを引き払い、地元である待流島へ帰ろうとしていたイサミは、フェリーの中で覚えのない絵はがきとそこに記されたメッセージを見る。『十年前、裏山に埋めた魔王の封印が、解かれるよ』。……自分の名前にも使われている“勇”の字をゲームの勇者と重ね、勇者ごっこに興じていたあの頃を思い出した彼は、勇者として魔王の謎へ挑む。
冒頭の引きにイサミさんという人間が色濃く映されている点へまず目を惹かれました。キャラクターの造作力と描写力が本当にすばらしい。
昔の友達――勇者パーティの面々も、なんとなく噛み合わない島の人々も。彼ら自体に力があるからこそイサミさんとの関係性やふとした関わりひとつひとつに緊迫のにおいを醸し出し、子供の他愛ない遊びに連なる魔王の謎を淵のように深めていく。物語的な仕掛けが登場人物の妙により、それこそ歯車のように連動しながらミステリーを構築する有り様、唸らされました。
そして謎を追う中、物語は一気に転じます。ぜひイサミさんといっしょに真実と向き合っていただきたく!
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)
かなり良かったです。「黒歴史っぽい勇者ごっこ」から始まって、実は子供の善意と無知が取り返しのつかない悲劇に繋がっていた、という反転が強い作品でした。
一番良かったのは、「勇者・僧侶・魔法使い・騎士」という子供っぽい記号が、そのまま痛々しい現実の仮名になっているところです。最初は少しコミカルで、イサミ自身も黒歴史として見ているのに、読み進めるほどその遊びが“現実を理解できない子供たちなりの必死な言語”だったと分かってくる。この反転がとても効いていました。特に、古いセーブデータに残った「騎士ヒメノ」の名前で記憶が割れる場面は、かなり強く惹かれました。
就活に失敗して、失意のまま故郷の離島に帰ってきた主人公。
そんな彼が、勇者ごっこに明け暮れていた十年前、大人になった彼らの前になぜか、当時の設定の「魔王」の存在が……
この作品……拝読し鳥肌立ちました。
文章の完成度が高すぎる。
心理描写も風景描写もすばらしい。
鮮明でかつ安定してる。
場面の切り替えも演出も、スムーズに脳内に浮かぶ。
独白も自然で無理がない。
何より導入からの情報制御とノスタルジーの使い方が上手い。
何ていうか……書店に並んでいるプロの作品を、いきなり準備無く読んだ驚きと言うか……
この作者様、何者?
ああ……マズイです(汗)
この作者様の他の作品も、もしあれば読みたい……とすら思ってしまいました……
これがあるからカクヨムはやめられないですね。