第3話

 塔内部に侵入し、第一階層とでも表すべき其処は、四角の通路が四方向に広がる迷路の様になっていた。否、ここは格好を付けて迷宮ダンジョンとでも呼ぼせてもらおう。


 早くも先程、角っこからラブコメが如くぶつかって来やがったゴブリンを殴り殺したところだ。随分と醜悪なヒロインも居たもんで、不細工で小太りの二段構え。それでいて成人男性並みの強さと来た。


 ヒロイン大失格、二度と面も拝みたくないね。






「と言っても、何でかコイツらしか居ないんだがな」


 侵入開始から一時間程経った頃合い、都合二十匹目の激キモヒロインことゴブリンを殴殺する。頭部を砕かれた奴さんは声を出す事も叶わず、コツンと米粒大の石ころを残して霧散した。


「不思議なもんだ。血は出るってのに、死んじまったら躯すら残らねぇ。落とすのは一見無価値な石ころだけ」


 摩訶不思議ではあるが、どうせ考えるだけ無駄な事。尤も塔が空から降って来たってだけでも意味不だってのに。


 魅力など一切感じない石ころを拾い上げ——そのまま口内に放り込み、奥歯で噛み砕く。完全に飲み込んだところで、虚空に向かって軽くスパーリングを開始。


 …………。

 やっぱりか。


「肉体強度が上がってやがる」


 瞬発力を司る神経系、腱や関節の強度諸々が格段に上昇している。これこそが出来心でつい先程、十九匹目の石ころ——『魔石』とでも呼ぼうか——を食した際に気付いた魔石の真価。


 たった二つ、しかも箸で掴むのも難儀なサイズでありながら目を見張る程の身体強化。となれば、これ以上の魔石を食べれば俺は——。


「んだそれ、クソつまんねぇじゃん。ゴブリン狩りなんか辞めだ辞め」


 俺は何を胸に、何を期待して此処に来たのかを見失ってはならない。己の更なる強化では無く、退屈なんぞ微塵も感じない未知を、苦戦を強いられる相手を求めて此処に立っている。


 「危ねぇ危ねぇ。自らの手でつまんない選択を選んじまうとこだったぜ」


 あの退屈を再び味わうのは御免被る。折角の機会を潰す訳にはいかんのだ。


 …………。

 こう言う時に、誰か軌道修正してくれる奴でも居てくりゃ良いんだが。





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