もし、世界を滅ぼすほどの力を持った化け物が突如現れたら、人類は対抗できるでしょうか。
その相手が現代兵器の全てを無効化するほどの甲殻を持ち、鉄をも溶かす酸を吐き、とてつもない物量で徒党を組んで襲い掛かってくるとしたら、どうでしょうか。
そんな仮定の下に繰り広げられる壮大な物語が、この『プロジェクト・アマテラス』です。
まず、大きな魅力の一つは情景や兵器の細やかで重厚な描写であり、世界に没入しているかのようなリアルさを感じられます。ミリタリーものにありがちな数字だけでの表現ではない、比喩と描写力で作り上げられた、設備や兵器の重々しさに注目してください。先に最下部の技術資料集に目を通すのも大いにアリです。
続いて、人間心理の細やかさと成長。仇敵であるカルナに家族や友人を奪われた人たちが、命を賭して戦場へ向かう。でも彼らの全員が元から兵士だったわけではなく、覚悟を胸に戦うことを選択している。そして、それぞれに譲れないものがある。その複雑な心情に触れてください。
そして、その隙間に忍び込んだ伏線の数々からも目が離せません。人類どころか味方部隊すら一枚岩ではありません。誰が何を隠して戦っているのか。誰と誰が裏で繋がっているのか。何より敵の生態は。感じた違和感は全て、物語を紐解くカギになることと思います。
敵は意味が分からないくらい強大で、人類の力不足を目の当たりにする場面が何度も訪れます。それに打ちひしがれる中、それでも未知の生物を相手に全てをかけて最前線で戦い続ける彼らは、果たして地球を食い物にせんとする謎の侵略者を完全に退けることはできるのか。
一度触れたら結末までついて行きたくなるような、絶望に抗う物語です。ぜひ一読いかかでしょうか。
異星生命体「カルナ」に侵食され、白化した四国。唯一の生命線である瀬戸大橋を守るために投入される兵器「スサノヲ」。この設定だけで痺れるSFファンも多いはず。
特筆すべきは、単なる怪物退治に留まらない「カルナ」の生物学的リアリティと、日本神話をSF的ガジェットに落とし込む構成の妙です。18歳の少女・美桜が、肉体的な限界と精神的な重圧に晒されながらも、機体と同調(シンクロ)していく描写には胸が熱くなります。
冷徹ながらも筋の通った小田桐司令のセリフや、緊迫感あふれる戦闘シーンの解像度が非常に高く、読み進める手が止まりません。緻密に組まれた世界観の中で「人間とは何か」を問いかける、令和のロボットSFの良作です。